毛色パターンの増加は「家畜化」のはるか前に遡る?
イヌやオオカミの毛色は、「ユーメラニン」という黒い色素と、「フェオメラニン」という黄色い色素の2種類で作ることができます。
これら2つの色素が、体の適切な場所で生成されることで、非常に異なる毛色パターンが生まれるのです。
またこれまでの研究で、フェオメラニン(黄色)の産生は、Agouti (アグーチ)遺伝子がつくりだす「アグーチ・シグナリングタンパク質(ASIP)」によって制御されていることが分かっていました。
研究チームは今回、イヌの毛色パターンの起源を調べるため、ユーラシア大陸で採取された約5000年前のイヌやオオカミのDNAを分析。
その結果、過去にAgouti遺伝子の2カ所で遺伝的な突然変異が起きていたことが特定されました。
それから、ASIPの発現の制御とその組み合わせにより、5つの主な毛色パターンができることも判明しています。
色の表現型は、「ドミナント・イエロー(DY)」「シェイディング・イエロー(SY)」「アグーチ(AG)」「ブラックサドル(BS)」「ブラックバック(BB)」の5つです。
さらに、チームは、古代のイヌとオオカミの遺伝子を調べて、ドミナント・イエロー(DY)のハプロタイプが、約3万年前のイヌの家畜化よりはるか昔、およそ200万年前にはすでに存在していたことを突き止めました。
研究主任の遺伝学者、ダニカ・バナシュ氏は「これはイヌとオオカミが種分化するよりも古く、このことから両者の最後の共通祖先は、少なくとも200万年前に遡ることを示唆しています。
つまり、毛色のバリエーションの多様化は、イヌがイヌになるずっと前に起こっていたのです」と説明します。
これまで、イヌの毛色は、人類が数千年をかけて遺伝子をかけ合わせたことで急増したと考えられてきました。
しかし、今日存在するイヌのほとんどは、上記5つのパターンで表現可能です。
人がイヌの毛色を増やしたというのは、少々、過大評価だったのかもしれません。