人間の言語は子音を重視している

知らない外国語のニュースを聞くと、音がひと続きに流れていくばかりで、どこで単語が切れているのかさっぱりわかりません。
実はこれは、外国語に限った話ではありません。
ふだん話している言葉にも、単語と単語のあいだに空白のようなはっきりした切れ目はないのです。
それでも母語なら、脳が音の流れを自動的に単語へ切り分けてくれます。
では、脳は何を目印にして切っているのでしょうか。
素直に考えれば、大きくてはっきりした音のほうが目印に向いています。
母音は声を長く響かせる音で、子音よりも音のエネルギーが大きく、耳に目立ちます。
実際、1歳になる前の赤ちゃんは、その目立つ母音を頼りにしていることが報告されています。
ところが1歳を過ぎたあたりを境に、人間は手がかりを子音のほうへ切り替えます。
目立つ音より、目立たない音を重く見るのです。
理由は、子音のほうが単語を見分ける情報を多く持っているからです。
たとえば「ナゾロジー(NAZOROJI)」を子音だけで「NZRJ」と書いても、「信長(NOBUNAGA)」を「NBNG」と書いても、その決まりを知っている人には何のことか見当がつきます。
ところが母音だけを抜き出して「AOOI」や「OUAA」とすると、情報が足りず、何のことだかさっぱり分かりません。
単語を見分ける情報の多くを、子音が握っているからです。
だから多くの言語で、単語の切れ目を探すときには子音が目安として使われます。
実際、母音を省く書き方は、古代エジプト語や古典ヘブライ語にも見られます。
さらに現代のアラビア語でも短い母音はふつう書かれず、「kataba(彼は書いた)」は「ktb」と3つの子音で書かれます。
このように、単語を聞き分けるときに母音より子音を頼りにする傾向を、「子音びいき(子音バイアス)」と呼びます。
では、この子音びいきはどこから来るのでしょうか。
人間に近いサルの仲間を調べた実験でも見つかっていないことを考えると、言葉を話す人間だけが持つ、特別な言語能力や脳の配線から生まれるようにも思えますが、本当なのでしょうか?
それとも、話し言葉を毎日聞くうちに、よく出てくる音の並びを覚えることで自然に身につくのでしょうか。
後者なら、言葉を話せない動物でも、人の話を聞いて暮らしていれば子音びいきが育つはずです。
そこで研究チームが目をつけたのが、犬でした。
犬自身は言葉を話しませんが、家庭で暮らす犬は毎日のように人に話しかけられています。



























