犬の脳は母音ではなく子音で言葉の区切りをみつけている

犬も子音に注目して、人間の言葉を聞いているのでしょうか。
答えを得るため研究者たちは、成人20人とハンガリーの飼い犬20匹に、3パターンの人工の「言葉の流れ」を聞かせました。
流れてくるのは、意味を持たない3音節の単語を、切れ目なくつないだ音声です。
一つ目は、子音を頼りに単語を区別する場合です。
日本語でたとえるなら、「tanaka(たなか)」と「tanuki(たぬき)」のように、t-n-k という3つの子音が同じ順に並び、あいだの母音だけが入れ替わっています。
二つ目はその逆で、母音を頼りに単語を区別する場合です。
「tanaka(たなか)」と「yamada(やまだ)」のように、a-a-a という母音の骨組みが共通で、子音のほうが入れ替わります。
三つ目は、どちらの目印もない場合です。
同じ音節をばらばらの順につなげただけで、繰り返し現れるまとまりがそもそもありません。
そして、頭に貼った電極で、人間と犬の脳波を測りました。
音楽を聴いていると、曲のリズムに合わせて思わず手拍子を打ちたくなることがあります。
これまでの研究で、人間の脳にもこれとよく似た性質があり、聞こえてくる音にリズムを見つけると、脳波がそのリズムに合わせて規則正しく揺れはじめることがわかっています(神経同調)。
脳が「ここからここまでが1つの単語だ」と気づいていれば、それに対応する脳活動が発生し、脳活動は手拍子を入れたような反応をみせてくれるわけです。
研究チームを率いるアッティラ・アンディクス氏によれば、リズムを確実にとらえているほど、脳の反応はリズミカルになるといいます。
では犬の場合はどうなのでしょうか?
犬に「どれが単語に聞こえた?」と尋ねることはできませんが、この手拍子の強さを比べれば、どの音声で単語を見つけたのかを脳から読み取れるのです。
すると犬の場合、どちらの目印もない音声と比べて、子音型の音声を聞いたときにだけ人間と同じように、単語の頭に揃う波が現れました。
犬の脳にとって、母音のパターンは単語の目印として働いていなかったことになります。
一方で人間の脳は、子音型でも母音型でも、単語の頭に揃う波をはっきり示していました。
人間にとって母音は、子音に劣る目印ではあっても、目印ではあったわけです。
ただ揃い具合は子音型のほうが高く、母音型を25%ほど上回っていたと報じられています。
別の角度から測っても、同じ結果が出ました。
話し言葉を単語に切り分けているとき、脳には単語の始まりから約0.4秒後に特徴的な反応が現れることが知られています。
この反応も、人間と犬の両方で、子音型の単語を聞いたときにだけはっきり現れました。
興味深いのは、どの音声でも母音のほうが子音より大きく響いていたという点です。
もし音の大きさのみをもとに区別していたなら、母音での区別が優勢になるはずですが、実際はそうなりませんでした。
研究チームは「子音の並びのほうが、ひと続きの音を小さなまとまりに切り分ける手がかりとして役に立つ」ことから犬でも脳がそちらを優先するのだと考えています。
人間にしかないと思われてきた言葉の聞き方が、人の話を聞きながら暮らす犬の脳にもあったのがはっきり示されたのは、今回が初めてです。



























