子音を重視するのは種を超えた仕組みなのか?

では、犬の子音びいきは、子犬のころから人の声を聞いて育たないと身につかないのでしょうか。
子犬が周りの環境に慣れていく大切な時期(社会化期)は、生後12〜14週ごろまでとされています。
今回の犬20匹のうち11匹は、この時期が終わる前から人の家で暮らしていたとみられる犬で、残る9匹は生後12週を過ぎてから人の家にやってきたとみられる犬でした。
調べてみると、両グループのあいだで子音びいきの強さに差はなく、遅くやってきた9匹だけで調べても、子音びいきははっきり現れていました。
子音びいきは、子犬時代に話し言葉を浴びなければ手に入らない「期間限定」の能力ではないと考えられます。
もっとも今回の研究で調べられた犬の数は多くなく、引き取られる前の暮らしぶりも完全にはわかっていないため、研究チームはこの点の読み取りには慎重を求めています。
それでも、遅れて人の家にやってきた犬たちの脳にも、子音びいきが見られたことは動きません。
研究チームは、年齢に関係なく働く脳の仕組み、つまり繰り返し耳にする音の並びから規則性を拾い上げていく力(統計的学習)が、子音びいきを生んでいると見ています。
そうだとすれば、人間の赤ちゃんの子音びいきも、特別な言語能力がなくても、同じ仕組みだけで育ちうるのかもしれません。
アンディクス氏は「これらの結果は、脳が話し言葉に合わせて調整されること、とりわけ子音バイアスが生まれることに、生まれつき特別な配線をもつ脳や人間のような言語能力は必要ないことを示唆しています。日常的に話し言葉を聞くだけで脳の働きが変わり、これまで人間でしか見られなかった処理の特徴が生まれうるのです。たとえ進化的に私たちから遠い種であってもです」と述べています。
ひと続きの情報を小さなまとまりに区切ろうとする性質そのものは、複数の種に共有される素因だと論文は位置づけています。
もしこの結果が正しいならば、犬につける名前は母音ばかりよりも子音の多い名前のほうがいいかもしれません。
私たちが何気なくかける「おはよう」や「散歩に行こうか」も、犬の脳の中では、子音を手がかりに単語へと切り分けられているのかもしれません。



























