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ヒトと交流するために進化? オオカミにはないイヌの表情

2019.06.18 Tuesday

Credit:pixabay

Point
■イヌは意外なほど豊かな表情を見せる動物だが、これはヒトと暮らす中でイヌたちが獲得した進化の結果

■解剖調査によるとイヌには内眉を動かすための表情筋を持っているが、オオカミにはこの筋肉が存在しない

■イヌがオオカミから分岐して3万年ほどと言われるが、近縁の種がこれほどの短期間で進化上の変化を見せることは驚き

イヌは非常に表情が豊かな動物だ。

イヌに親しみの無い人からすると「どうせ加工でしょ?」「飼い主のヒイキ目」とか思ってしまうかもしれないが、今回報告された研究では、解剖によってそれが事実であることを確認したという。

今回の研究者たちが行った調査によると、イヌたちは豊かな表情を作るために、目の周りに特別な筋肉を持っていることがわかった。そしてこれは、イヌの先祖であるオオカミには存在していない筋肉だったのだ。

どうやらイヌたちは、ヒトと暮らす中で、表情を作り出す能力を獲得したらしい。

この研究は、英国ポーツマス大学及び米国の複数の大学研究者たちの共著で発表され、米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載されている。

なお、この研究では関連組織から死んだイヌとオオカミの死体を引き取って解剖調査を行っており、生きたイヌやオオカミを犠牲にしていないことを予め断っておく。

Evolution of facial muscle anatomy in dogs
https://www.pnas.org/content/early/2019/06/11/1820653116

あざと可愛いイヌたちの進化

Credit:pixabay

イヌたちには内眉を引き上げる表情筋が備わっている。

この内眉の動きは目を大きく見せ、幼児らしいあどけなさを作り、悲しんでいる様子を上手く伝えることができる。これは、人間から良い反応を引き出すのに有効である。つまり、「可愛い」と思わせることができるのだ。

人間と2分間以上接触させると、イヌはこの内眉を引き上げる動きを強くする。こうした反応はオオカミで同じ実験をしても見られない。イヌたちは人間が見ているときのほうが、活発にこの筋肉を動かすのだ。

さらに、こうした人間に向けて表情を作るというイヌの動作は、進化による変化の可能性が高いという。

解剖によると、イヌには2つの特徴的な表情を作るための筋肉が備わっている。

1つは内眉を引き上げる筋肉(LAOM)、もう一つ瞼を耳に向かって引っ張る筋肉(RAOL)だ。

この2つの筋肉について、イヌの祖となるオオカミと比較して解剖調査を行った結果、なんとオオカミにはこの2つの筋肉が存在していなかった

オオカミ(右)とイヌ(左)の顔の筋肉組織/Credit:Tim D. Smith (Cambridge University Press, Cambridge, UK)

オオカミの顔には同じ位置に細かく不規則な繊維の塊があるだけで、眉を上げるための筋としては機能していなかったのだ。

さらに、古い犬種とされるシベリアン・ハスキーには、2つの表情筋のうち耳に向かって瞼を引く筋肉(RAOL)が存在していない

シベリアンハスキー / Credit:pixabay

シベリアン・ハスキーはオオカミに近い特徴を多く残しているとされるが、この解剖結果からは表情筋がオオカミからイヌへと変化する過程で形成されたことが示されている。

オオカミやハスキーのキリッとした表情は、裏を返すと表情筋に乏しいことが原因のようだ。しかし、それは誰にも媚びた表情を見せない高潔さの表れでもあるのだろう。

まあ、シベリアン・ハスキーは見た目とは裏腹に、すでに人間に慣れ親しんで媚び媚びかもしれないが…。

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