「まばたき」の科学

もしあなたが犬を飼っているなら、愛犬の目をじっと見つめ合うときに、向こうから小さなまばたきを返してくれた経験はありませんか?
あるいはドッグランで他の犬と向かい合っているとき、妙にタイミングを合わせるように互いに目をしばたたく姿を見たことがあるかもしれません。
実は人間の世界では、まばたきは単なる「目の乾燥を防ぎ異物を排除するだけの生理現象」にはとどまらないという見方が近年広がっています。
ヒトや一部の霊長類において、相手がまばたきをすると自分も同じようにまばたきをしてしまう“同期現象”が報告されており、これはコミュニケーション手段の一つと考えられています。
ちょっとした目の動きが、実は「リラックスしよう」「仲良くしているよ」という雰囲気づくりに大きく貢献しているかもしれない――そう考えると意外に奥が深いですよね。
一方、犬の世界でも、あくびの伝染や“遊びに誘う顔”の模倣などを通じた「表情模倣」がさまざまな研究で示されており、相手の動作を真似することで緊張を和らげたり、遊びのルールを共有したりするとも言われています。
ただ、「まばたき」に関して同じように犬が“同期”したり“真似”したりするのかどうかは、これまで大きく取り上げられてきませんでした。
そこで今回の研究では、犬がほかの犬のまばたきを見たときに、自分のまばたきを増やすかどうかを本格的に検証することにしました。
もしヒトや霊長類と同じように“まばたきの同期”が確認されれば、犬は“まばたき”というわずかな動作を通じて「敵意はないよ」「ここは安心して大丈夫」というメッセージを送り合っているかもしれません。
普段は見過ごされがちな犬のまばたきが、実は犬同士の関係づくりや衝突を回避するための、とても重要なシグナルである可能性があるのです。