タバコの煙でイヌの膀胱がんリスクが6倍に!自宅で喫煙していなくても要注意
タバコが人間の健康に悪影響を及ぼすことは、よく知られています。
そして受動喫煙の防止を目的として、様々な場所で「分煙」が行われるようになりました。
煙には十分気を付けていて、「タバコを吸うのは喫煙所か、家のベランダだけ」という人もいることでしょう。
しかし、イヌを飼育している家庭では、もっとタバコの煙に気を付ける必要があるかもしれません。
獣医師のナップ氏によると、「がんは、遺伝的性質と環境的要因が組み合わさったもの」です。
これは人間もイヌも同じであり、愛犬たちはどんな環境で日々過ごしているかで発がん率が変わってくると言えます。
そこで今回ナップ氏ら研究チームは、タバコの煙がイヌの発がん率にどれほどの影響を与えるのか調査しました。
イヌたちがタバコの煙を吸うと、そこに含まれる化学物質を取り込み、尿を通して排出します。
これががんの原因となりますが、イヌの尿に含まれるニコチン代謝物質「コチニン」を分析することで、そのイヌがどれだけ煙にさらされたか評価できます。
調査の対象となったのは、スコットランド原産のテリア犬「スコティッシュ・テリア」120頭のデータ3年分であり、そこに飼い主のアンケート結果を組み合わせて分析しました。
調査にスコティッシュ・テリアが採用されたのは、もともとこの犬種が他の犬種よりも膀胱がんの発症率が20倍高いからです。
研究チームによると、スコティッシュ・テリアのように遺伝的にがんを発症しやすい犬種を調査に用いることで、より少数のサンプルで環境要因の影響を明らかにできるようです。
ナップ氏も「この研究を雑種のイヌで行うとしたら、同じリスクを明らかにするために何百頭ものイヌが必要になるでしょう」と述べています。
そして分析の結果、タバコの煙にさらされているイヌは、そうでないイヌと比べて膀胱がんを発症する確率が6倍も高いと判明しました。
またがんを発症したイヌは中央値10 pack-year(タバコ7万3000本)分の煙にさらされており、がんを発症しなかったイヌは中央値1.5 pack-year(タバコ1万950本)分の煙にさらされていたことも分かりました。
さらに興味深いことに、飼い主が喫煙していない場合でも、尿中にコチニンが含まれるイヌがいました。
この場合、イヌが家の外でタバコの煙を吸ったか、あるいは、飼い主が外でタバコの煙にさらされ、その服に付着した成分をイヌが取り込んだと考えられます。
ナップ氏も、「タバコの煙が充満するコンサートやパーティーから帰宅した飼い主の膝の上に、飼い犬が飛び乗って寄り添ってくる場合、飼い犬は衣服を通してタバコの煙の成分を取り込む可能性がある」と述べました。
飼い犬たちは飼い主のことが大好きで、よく飼い主の顔や手、服などのニオイを嗅いだり、直接舐めたりします。
もし飼い主が喫煙所のような場所から帰ってきた後であれば、少なからず愛犬にも悪影響を与えることになるでしょう。
もちろん、タバコの煙に多少さらされたからと言って、愛犬が必ず膀胱がんになるわけではありません。
それでも今回の研究は、少しでもリスクを避けたい飼い主たちにとって良い情報となりました。
もし喫煙したり、タバコの煙が充満する場所へ出向いたりするなら、自宅に帰ってきて愛犬と触れ合う前に、服を着替えることができるでしょう。