可愛すぎる進化の背景

ネコ(ネコ科)とイヌ(イヌ科)は、進化の系統樹で約5000万年前に分岐した遠い親戚同士です。
野生のネコ科動物(ヤマネコなど)はイヌ科ほど鼻面が長くはなく、頭骨の形状も比較的コンパクトですが、野生のイヌ科動物(オオカミなど)は長い鼻面を持ち、両者の顔立ちは大きく異なっています。
ところが人類は古来、犬や猫を好みの姿に品種改良して多様な品種を生み出してきました。
人工選択によってペットの形態は著しく変化し、イエイヌ1種における頭骨の形状バリエーションは野生のイヌ科全体(オオカミ、コヨーテ、キツネなど)で見られる種間差を上回ることが明らかになっています。
イエネコ1種でも、頭骨形状の多様性が野生ネコ科(現生41種)の全体差より大きいことが確認されています。
舌を出した狆(チン)は、極端に平たい顔を持つ愛玩犬の一例で、人間の選択圧が生み出した「かわいい」容姿です。
人間はペットに「赤ちゃんのような」丸い顔立ちや大きな瞳、そして低く潰れた鼻といった幼児的な特徴を特に好む傾向があります。
実際、パグやペルシャといった犬猫の代表的な愛玩品種では、こうした幼児的な顔つきが極端なまでに強調されています。
これらは専門的には「短頭種」と呼ばれ、頭が前後に短く鼻面が平らな骨格形態を示します。
いわゆる平たい「ぶちゃむくれ」顔は人間には愛嬌があって可愛らしく映るため、ペット愛好家の人気を集めてきました。
そこでワシントン大学セントルイス校とコーネル大学の研究チームは、犬と猫の頭骨形状の分布(形態空間)を同じ土俵に載せて比較する大規模な研究を行いました。