収れんする「ぶちゃむくれ」進化で犬と猫が同じ顔になる
収れんする「ぶちゃむくれ」進化で犬と猫が同じ顔になる / Credit:clip studio . 川勝康弘
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収れんする「ぶちゃむくれ」進化で犬と猫が同じ顔になる (2/3)

2025.05.13 18:00:26 Tuesday

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“ぶちゃむくれ収れん”進化の衝撃

画像
Credit:Canva

研究チームは、国内外の動物病院で撮影されたペットのCTスキャン画像や博物館の骨格標本などから、およびそれらの野生の近縁種を含む計1810体の頭骨データを収集しました。

頭骨における形状の指標となる47箇所のランドマーク点を設定し、各頭骨の三次元座標を用いて形態を定量的に比較しました。

この包括的な解析によって、犬と猫の家畜化による形態進化の全貌が浮かび上がりました。

まず、犬と猫それぞれの頭骨形状の多様性がいかに飛び抜けて大きいかが改めて確認されました。

イエイヌでは、一種内部の形状バリエーションが野生のイヌ科全体(オオカミやコヨーテ、キツネなど)で見られる差異を上回るほど極端だったのです。

イエネコでも、一種内部の形態多様性が野生のネコ科(ライオンやトラなど)全体よりも大きいことが示されました。

言い換えれば、人間は人工選択によって、短期間でイエイヌやイエネコの形態的幅を野生の近縁種を超えるほど拡大させてしまったのです。

しかし本研究でもっとも注目すべき発見は、犬と猫という別種の間で頭骨形状が「収束」していたことでした。

研究チームが両者の形態空間を重ね合わせて比較したところ、短頭の猫品種と犬品種が同じ領域に重なって存在することが分かりました。

筆頭著者のアビー・ドレイク氏(コーネル大学)は「猫の形態空間が犬のそれに重なっているのを見たとき、『一体何が起こっているの』と目を疑いました」と驚きを語っています。

つまり、ペルシャ猫やエキゾチックショートヘアなどの短頭型猫の頭骨は、パグやペキニーズなどの短頭型犬の頭骨と酷似した形状に進化していたのです。

ペルシャ猫は平たく短い顔と上向きの鼻先を持つ短頭種の代表で、犬のパグやペキニーズと比べても遜色ない「ぶちゃむくれ」顔です。

実際、本研究で測定されたペルシャ猫、パグ犬、ペキニーズ犬の頭骨はいずれも平坦で短い顔と上向きに傾いた鼻口部(マズル)・口蓋を備え、互いに驚くほど類似していました。

こうした「赤ちゃん顔」の頭骨形状は自然界には存在しない特殊なタイプで、計測対象の中には鼻骨が完全に消失してしまったペルシャ猫もいました。

さらに興味深いことに、この短頭形質はネコ科内部でもイヌ科内部でもそれぞれ2回ずつ独立に進化していたのです。

犬では、ブルドッグ系統(欧州原産)とパグ・ペキニーズ・狆・シーズーなど東アジア原産の愛玩犬系統で別々に平たい顔が生じ、猫ではペルシャ(ヒマラヤンなどを含む)系統とビルマ(バーミーズ)系統で独立して短頭形質が進化していました。

これは、犬と猫の間で収れん進化が起きただけでなく、それぞれの種の内部でも収れんが繰り返し起こったことを意味します。

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