人間にとって犬はどんな存在?
人類と犬との関係は2万年以上前に始まり、今や私たちにとって犬は最良のパートナーとなっています。
私たちと犬との関係は、犬の家畜化以降、大きく変遷してきました。
かつては主に労働力としてのみ扱われることもありましたが、今日では世界中で家族の一員と見なされるほど大切な存在になっています。
とはいえ、犬が私たちの社会的ネットワークの中で果たす「具体的な社会的役割」については、これまであまり明らかにされていませんでした。
人間の社会的ネットワークは、さまざまな相手から構成され、それぞれに与えてくれる役割が違います。
たとえば、恋人は親密さや心理的な援助を、子どもは養育の機会や長く続く安定した関係性を、親友は低ストレスで気軽な付き合いをもたらしてくれます。
では、犬との関係性は私たちにとってどのようなものなのでしょうか?

今回の研究では、717名の犬の飼い主を対象に、犬との関係と人間関係(子ども、恋人、親友、親族)について13項目の尺度で比較調査を実施。
親密さ、信頼性、愛情、満足度、衝突、支配関係など、さまざまな関係性の要素を細かく測定しました。
その結果、飼い主は親友や家族を含め、人間の誰よりも愛犬との関係性に最も高い満足度を示していたのです。
特に「仲間としての一体感」「安心して頼れる関係性」「低ストレスで気軽に付き合える」といった評価スケールでは、親友と同等かそれ以上の高得点を記録しています。
また、犬との関係では「不和や対立の少なさ」も際立っていました。
親友や恋人との間にはしばしば衝突も起こりますが、犬とはほとんど喧嘩をしないという点が、満足度の高さにもつながっていたのです。
さらに興味深いのは「支配関係」に関するスコアです。
犬との関係では、飼い主が圧倒的に主導権を持っており、人間関係に比べて極めて非対称な構造となっていました。
この点は、親と子どもとの関係に似ています。
つまり、飼い主にとって愛犬は「安心して頼れる親友のような存在」でありながら、「完全にコントロール可能で、世話をしたくなる子どものような存在」であり、そのユニークな関係構造が深い満足感を生んでいると考えられます。