イヌは場所とモノどちらを認識しやすいのか
実験はおやつを与える皿の「位置」と「色形」を変えた2つの条件で行われました。
「位置」の条件では、皿をイヌに対し右か左ななめ前方に置き、特定の方向においたときのみおやつが入っている状態にします。
「色形」の条件では、色形が異なる2種類の皿のうち一方を実験者の前に置き、特定の色形の皿のみおやつが入っている状態にします。
どちらの場合でもおやつにたどりつけたら「正解」とし、それぞれの条件で規定時間以内に正解にたどりつけるようになるまでの回数を測定しました。
なお、イヌがニオイでおやつの場所を判断できないよう、不正解の皿にもおやつが擦り付けてあります。
実験対象となったイヌは全部で82匹で、ボーダーコリー、ショートヘアード・ハンガリアン・ビズラ、ウィペットなどの犬種を含んでいます。
イヌは皿の「位置」の方が覚えやすい
実験では、イヌが正解の皿に歩いていく時間が15秒以上かからなければ「学習した」と判断し、それまで何回の試行が必要か測定しました。
この条件で実験した結果、多くのイヌは「位置」を変えた条件の方が少ない試行回数で学習することができました。
「位置」条件の方が学習が速いという結果は犬種によらずどのイヌでも同じ傾向です。
ただし、ボーダーコリーなどの一部の犬種は、「位置」条件と「色形」条件で学習にかかる回数の差が他のイヌより小さく、「色形」条件でも学習することができていました。
これまで、イヌの認識が人間よりも「空間的条件」を重視してしまうのは視力の差が原因ではないかと考えられてきました。
しかし、一部のイヌが「色形」条件でもモノを認識できている以上、イヌと人間の認識の違いは視力によるものではない可能性があります。
このため、研究グループはイヌの視覚や認知能力に関しても調査を行い、認識の違いについて考察することにしました。