盲目の犬「クンデ」を助けたい!工学部の学生たちの挑戦

アメリカでは45%以上の世帯がイヌを飼育していると言われています。
しかしイヌも年齢を重ねれば、人間と同じように視力の低下や失明といった問題に直面します。
視力を失ったペットの世話は難しく、向き合うべき課題となっていました。
このプロジェクトは、そうした課題に対し、単なる学術的研究の枠を超え、動物福祉という人間とペットの共生を考える領域に挑んだ意欲的な取り組みです。
きっかけは、ヒューストンに住む緑内障で視力を失った犬「クンデ」の存在でした。
年老いた盲目の犬が、壁や家具にぶつかりながらも懸命に歩こうとする姿を見た飼い主たちは、ライス大学の工学部の学生たちに助けを求めます。
そして学生たちは、「この犬に自由を与えられないだろうか?」という素朴で真摯な問いを胸に、プロジェクトを立ち上げたのです。

取り組んだのは、同大学の「Engineering Design」コースを履修する学部生チームで、機械工学や電気工学など、さまざまな知識を持つ学生が参加しました。
彼らは、犬が視覚の代わりに使える“新しい感覚”を提供する方法として、触覚(ハプティック)によるフィードバックに注目しました。
これまで、視覚障害のある犬は、飼い主の声やリードの操作によって誘導されるのが一般的でした。
しかしそれでは、犬自身の「自律的な行動」が制限されてしまいます。
「もし犬自身が、危険を察知して自分で方向を変えられるようになったら…」
その発想は、視覚障がいを持つ人間向けの触覚伝達(ハプティクス)技術にも通じるものでした。
人間にも使われ始めている触覚ナビゲーションベルトや振動による地図情報の伝達といった技術を、犬に応用しようという発想。
それを考えついたのが、大学生たちだったというのは実に頼もしい話です。
試行錯誤の末、彼らは軽量で、安全かつ簡単に着脱できる「触覚ベスト」の開発に成功しました。
そしてその試作品は、視覚を失った犬の生活を一変させました。