犬における「おもちゃ中毒」を調べた研究
私たちがイヌと遊ぶ時、ボールやロープ、ぬいぐるみなどを使うことはごく普通のことです。
しかし、時にイヌがこれらのおもちゃに対して異常なまでに執着する様子を目にすることがあります。
飼い主の呼びかけよりもおもちゃへの関心が強くなったり、食べ物よりおもちゃを優先したりするイヌもいます。
また、おもちゃを取り上げようとすると強く興奮する場合もあります。
一部のイヌに見られるこうしたおもちゃへの強い執着が、「人間のギャンブルやゲーム依存といくつかの共通点を持つのではないか」と考えたのが、今回の研究の出発点でした。
イヌは本来、遊びが大好きな動物ですが、その「楽しい遊び」がやめられない、コントロールできない状態にまで進むと、日常生活や健康に悪影響を及ぼす可能性が出てきます。
また、作業犬やトレーニング用のイヌでは、意図的に遊び好き(狩猟)の傾向が強化されていることも多く、こうした傾向が強まる可能性があります。
このため研究チームは、さまざまな犬種や年齢のイヌ105頭を対象に、おもちゃ中毒の科学的な評価を行いました。
まず、イヌと飼い主を実験室に招き入れ、3種類のおもちゃ(ボール、ぬいぐるみ、引っ張りロープなど)からイヌ自身がもっとも興味を示すものを選ばせます。
選ばれたお気に入りのおもちゃを使い、飼い主と一緒に遊ばせたり、イヌだけでおもちゃと過ごさせたりしました。
またおもちゃとご褒美入りのパズルを同時に出して、どちらに関心を向けるかを観察しました。
さらに、おもちゃを棚の上や箱に隠し、イヌがどのように反応するかを調べたり、すべての遊び道具を片付けたあとの様子も観察しました。
行動の評価では、人間の依存症で使われる基準を参考に、渇望(強い欲求が抑えられない状態)、自己コントロールの欠如、顕著性(他の刺激よりおもちゃを優先する)などの観点から分析しました。
加えて、飼い主に日常生活でのイヌのおもちゃへの執着や、遊びをやめさせることの難しさについてアンケート調査も行っています。