筋肉に瞬発力を与える遺伝子の変異
人の筋肉は、速筋繊維と遅筋繊維に分かれています。
速筋繊維は瞬発力を生み出す筋肉であり、短距離走に有利です。対して遅筋繊維は持久力に優れた筋肉であり、長距離走に有利です。
そしてこれまでの研究では、速筋繊維の収縮に「α-アクチニン3タンパク質」が役立つと分かっています。
ちなみにα-アクチニン3タンパク質は、「スピード遺伝子」として知られる「ACTN3遺伝子」によって作り出されます。
しかし現在、世界の約15億人、つまり5人に1人はACTN3遺伝子が変異しており、α-アクチニン3タンパク質を生産していません。
そしてACTN3遺伝子が変異している人は瞬発力に劣るものの、持久力の点で有利だと考えられています。
なぜなら、α-アクチニン3タンパク質の無い速筋繊維は、瞬発力を生み出す代謝方法からより効率的な代謝方法へと変化しているからです。
また、プロの短距離選手の多くは変異していないACTN3遺伝子をもっていると言われています。
さて、こうした背景にあって、研究チームはACTN3遺伝子の変異、つまりα-アクチニン3タンパク質欠乏と耐寒性の関係を調べることにしました。