イヌが雑草を食べるのはなぜ?「腹痛」や「吐くこと」が主な理由ではない
イヌが雑草を食べるのを初めて見た時、私たちはびっくりしたかもしれません。
時には草を食べた後に、それらを「吐き出す」という行為がセットになることもあるでしょう。
しかし次第に、それがイヌにとって「よくある行動」だと分かってきます。
実際、ある調査では「飼い主の80%は愛犬が定期的に草を食べていることに気付いている」と報告されています。
そしてこの行為は、イヌだけに限ったものではありません。
オオカミの糞には、74%の確率で、植物(主に草)が混じっていると言われています。
では、なぜイヌたちは草を食べるのでしょうか?
多くの人は、「イヌが草を食べるのはお腹が痛い時」だと考えています。
「草を食べて、腹痛の原因を吐き出しているのだ」という話を聞いたことがある人は多いでしょう。
しかし2007年のクイーンズランド大学(The University of Queensland)の「毎日草を食べた12頭のイヌ」を対象にした研究では、18回のセッションで5回しか嘔吐が起こりませんでした。
そして他の研究(2010年 ニューイングランド大学)によると、イヌが良くない食べ物によって軽度の胃腸障害を患っているケースでは、草を食べる可能性は低くなると報告されています。
これらの結果から、「お腹が痛い時に草を食べる」説の信頼性は低いように思えます。
似たような理論として、「イヌは下剤の役割を草に求めている」というものもあります。
これも上記の12頭のイヌの研究では、明らかな関連性は見られませんでした。
そのイヌたちは過去に消化器系の問題を抱えていませんでしたが、それでも喜んで草を食べていたのです。
そして12頭のイヌの研究の主な発見は、「イヌがまだエサを食べていないとき、草を食べる可能性が高い」ということでした。
つまり、イヌは空腹であればあるほど、草を食べる可能性が高かったのです。
こうした研究結果からヘイゼル氏は、「なぜイヌが草を食べるのか?」という疑問の答えについて、「”単に好きだから” かもしれない」と述べています。
イヌは草独特の食感や味わいが好きなのかもしれず、また地面に生えている草を食いちぎるという行為そのものが好きなのかもしれない、というのです。
これには、草の種類やイヌのストレスレベルなども関係していることでしょう。
もちろん現段階では、イヌが草を食べる理由が完全に明らかになったわけではなく、今後も様々な研究を重ねることで徐々に解明していく必要があるでしょう。
加えてヘイゼル氏は、イヌが草を食べるのを好むとしても、飼い主はその行為に注意を払うべき特定のケースを挙げています。
それは公園や道端、庭に生えている雑草に除草剤が散布されている場合です。
「イヌの膀胱がんと除草剤の曝露には関連性がある」という報告もあるため、イヌがどこの草を食べているか注意を払う必要があるのです。
特に人の手でよく管理されている公園や住宅街の植栽地の近くを散歩する際は、除草剤が散布されている可能性を考慮すべきでしょう。
しかしヘイゼル氏によると、除草剤が付着していないのであれば、「イヌが草を食べるのを無理に止める必要はなく、時々嘔吐しても問題はない」ようです。
イヌにとって草を食べることは、「よくあること」であり、今のところ、その行為と胃腸の不調を結びつける証拠はありません。
もし飼い犬が草を食べるのを見かけたときは、「もしかして草を食べるのが好きなのかな?」という目線で観察してみると良いでしょう。