大量出血したウサギを「人工赤血球」で救う!
大量出血を起こしている患者は迅速な輸血が生死を分けます。
しかし災害時や戦時など、医療体制がひっ迫した状況では輸血液の確保が困難です。
それ以外にも、出産時の大量出血は現在も妊婦の死因の第1位となっています。
日本の産婦人科の多くは小規模であり、全体の8割において輸血の事前準備ができていません。
そのため突発的な大量出血に対する迅速な対処が遅れてしまい、妊婦さんが大きな病院に運ばれる前に出血死してしまう事例が現在でも続いています。
さらに近年では新型コロナウイルスの流行により、利用可能な血液が世界的にも不足しています。
そのため、代用血液の開発が急がれていました。
代用血液として最有力と考えられているのが「人工赤血球(HbV)」です。
人工赤血球は、酸素運搬能力を持ったヘモグロビンを細胞膜を模した小胞(リポソーム)に結合させたもので、本物の赤血球に近い酸素運搬能力を発揮します。
また、人工赤血球は血液型に関係なく使用できるため、一刻を争う場合にも迅速な処置が可能です。
しかし、出産時に起こる大量出血において、人工赤血球がどの程度の効果を発揮するかは、まだ確かめられていませんでした。
そこで今回、防衛医科大学の研究チームは、人間の出産時の大量出血を模倣するため、出産直後の母親ウサギの子宮動脈を切断。
意図的に大量出血させて、人工赤血球を投与するテストを実施しました。
その結果、酸素運搬能力のない代用血漿のみを与えられた母親ウサギは全滅したのに対し、人工赤血球を与えられた母親ウサギは10羽中8羽が6時間後にも生存していたのです。
なお、比較のために本物の血液を輸血された母親ウサギは、8羽中全羽が6時間後にも生存していました。
この結果は、人工赤血球が失われた血液の代りにウサギに酸素を供給し、本物の血を輸血したのに近い効果を持つことを示します。