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太陽が未知の理由で「11年周期」の予想を超えた活動増加を示している

2025.09.21 12:00:43 Sunday

私たちの暮らしや地球環境に大きな影響を与えている太陽は、「約11年周期で活動を強めたり弱めたりしている」ことが知られています。

低緯度でもオーロラが観測されたり、太陽嵐によって通信障害が起きたりするのも、この太陽活動のリズムが関係しています。

ところが最近、太陽活動がこうした周期では説明できない動きを見せていることが明らかになりました。

2008年以降、太陽から吹く風(太陽風)や磁場などの指標が、11年周期で予想される活動の上限よりも高い状態に移行しているというのです。

この現象に注目したのは、NASAジェット推進研究所とカリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究チームです。

太陽はなぜ今までのリズムを超えて活動を強めているのでしょうか? NASAはその理由は解明できていないと述べていますが、このまま続けば地球や太陽系全体にもさまざまな影響があるかもしれません。

今回の研究の詳細は、2025年9月に科学雑誌『The Astrophysical Journal Letters』に掲載されています。

The Sun Reversed Its Decades-long Weakening Trend in 2008 https://doi.org/10.3847/2041-8213/adf3a6

実は観測史上最も弱いサイクルに入っている太陽

太陽は、約11年ごとに活動が活発になったり静かになったりする「太陽活動周期(Solar Cycle)」というリズムを持っています。

このリズムは、太陽の表面に現れる黒点の数が増えたり減ったりする現象として観察できます。

黒点が多い時期は太陽から出るエネルギーや風(太陽風)が強くなり、地球ではオーロラがよく見えたり、通信機器への影響が出たりすることがあります。

この11年周期は今から約180年前に、ドイツの天文学者ハインリッヒ・シュワーベ(Samuel Heinrich Schwabe)によって発見されました。

それ以降、世界中の科学者が黒点の数や太陽風の強さを観測し続け、「太陽はまるで呼吸しているかのように11年周期でリズムを刻んでいる」と分かってきました。

さらに現代では、太陽にはこの11年周期以外にも、もっと「長期的な変化」があることがわかっています。

例えば17世紀後半(1645年から1715年の約70年間)太陽に黒点がほとんど見られず太陽活動が非常に低下した「マウンダー極小期」と呼ばれる時代があったことが知られています。このときは地球全体の気温が下がる“ちいさな氷河期(小氷期)”が起きていました。

また、19世紀初めにも「ダルトン極小期」と呼ばれる、やはり太陽活動が低下した時代がありました。

そして実は現代も、1990年代から2008年の観測結果で太陽活動が弱まる流れが報告されており、「宇宙時代(人工衛星観測が始まった時代)以降で最も弱いサイクル」だと言われているのです。

そのため、専門家の間では「太陽はまた長い静かな時期に入るのかもしれない」と予想されていました。

2025年現在は、11年周期でいえば太陽は活動が強まる時期に当たっています。しかし長期的な傾向としては11年周期で最大になる活動の上限自体は下がっていたのです。

ところがNASAの最新の観測結果は、この予想からは説明のつかない太陽活動が示されました

今回の研究では、NASAの人工衛星が集めた「ラグランジュ点L1」と呼ばれる場所でのデータ(OMNI-2データ)を使い、太陽風や磁場の記録を2008年から2025年まで16年分にわたって詳しく分析しました。

黒点の数だけでなく、太陽風のスピード・濃さ(密度)・温度、そして「動圧(太陽風の強さ)」や「エネルギーの流れ(エネルギー流束)」など色々な指標を組み合わせ、太陽活動の変化を細かくチェックしています。

その上で「短い変動」に惑わされないように、太陽が1回自転するごとに平均をとって、“太陽全体の長期的な傾向”をなるべく正確につかむよう工夫しています。

こうした詳細な長期観測は一体何を報告したのでしょうか。

次ページ上限解放した太陽の不可解な活動増加

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