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たった1つで”ADHDリスクが最大15倍”になる遺伝子変異を3つ発見

2025.11.29 18:00:09 Saturday

ADHD(注意欠如・多動症)と診断される人は、子どもで約5%、大人で2.5%にのぼります。

ADHDは大人になるまで症状が発覚しないケースもあり、環境によりその症状の強弱は異なってきますが、基本的には遺伝が影響する先天的な症状だとされています。

しかし、「親や兄妹にはADHDの傾向がないのに、自分(または子ども)だけADHDだ」という人も存在します。

この“ちぐはぐさ”が、ADHDの遺伝をめぐる議論を長年分かりにくいものにしてきました。

そうなる原因は、ADHDには多数の遺伝子変異が複雑に関係しており、特定の遺伝子変異だけでADHDになる、というほど明確なものではないためです。

けれどデンマークのオーフス大学(Aarhus University)と米国ブロード研究所(Broad Institute of MIT and Harvard)の国際研究チームが報告した新たな研究は、3つの遺伝子のいずれかに特定の変異があるだけでADHDの発症リスクが最大15倍まで高まることを突き止めました。

この発見は、特定の遺伝子においては、その変異がADHDの発症に大きな影響を与えうることを示しています。

この研究の詳細は、2025年11月12日付けで科学雑誌『Nature』に掲載された論文にまとめられています。

Rare genetic variants confer a high risk of ADHD and implicate neuronal biology https://doi.org/10.1038/s41586-025-09702-8

 遺伝の謎に迫るADHD研究の最前線

ADHDは、子どものおよそ5%、大人では2.5%が持つ発達特性です。

家族内で似た傾向が見られることから、遺伝の影響は強いと考えられてきましたが、「どの遺伝子が、どのくらい関わるのか」という核心部分は長い間わからないままでした。

その謎を解きほぐそうと、デンマークとアメリカの研究チームは、ADHDと診断された8,895人の遺伝子を調べるという大規模調査に踏み切りました。

研究者たちが注目したのは、人の体をつくる設計図のうち、「エクソン(exon)」と呼ばれるタンパク質をつくる部分です。

ここには、体やの働きを直接左右する重要な情報が詰まっています。

研究チームは、数十万以上もある遺伝情報の中から、“まれだけれどもADHDの発症に影響が大きい”変化を徹底的に探し出しました。

その結果、ADHDのリスクを強く押し上げる3つの遺伝子が浮かび上がってきたのです。

ひとつめはMAP1A(Microtubule-Associated Protein 1A)で、神経細胞の形を支える“骨組み”をつくる働きがある遺伝子です。

ふたつめはANO8(Anoctamin 8)で、細胞の外と内でカルシウムイオンの流れを調節する仕組みに関わります。

みっつめはANK2(Ankyrin-B)で、神経が電気信号をスムーズに伝えるための足場を整える役割を担っています。

これらの遺伝子に“タンパク質の形が崩れるような変異”があると、ADHDの発症リスクは5倍から最大15倍にまで高まることがわかりました。

従来の研究では、1つの遺伝子がここまで大きな影響を持つケースはほとんど知られていなかったため、この発見はADHD研究にとって非常に重要な前進です。

さらに興味深いことに、こうした変異を持つADHDの人々は、初等教育のみで学校を終える割合が高かったり、長期の失業や低所得といった社会的な困難を抱えやすい傾向も確認されました。

今回の研究が見せてくれたのは、「ADHDとは単なる“集中力の問題”ではなく、脳を支える遺伝子の仕組みと深く結びついた特性である」という点です。

ただし、見つかった3つの遺伝子だけですべてが説明できるわけではありません。

むしろ、ここから先にこそ、この研究の面白さがあります。

次ページなぜ「3つの遺伝子」がADHDと関係すると言えるのか

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