遺伝の謎に迫るADHD研究の最前線
ADHDは、子どものおよそ5%、大人では2.5%が持つ発達特性です。
家族内で似た傾向が見られることから、遺伝の影響は強いと考えられてきましたが、「どの遺伝子が、どのくらい関わるのか」という核心部分は長い間わからないままでした。
その謎を解きほぐそうと、デンマークとアメリカの研究チームは、ADHDと診断された8,895人の遺伝子を調べるという大規模調査に踏み切りました。
研究者たちが注目したのは、人の体をつくる設計図のうち、「エクソン(exon)」と呼ばれるタンパク質をつくる部分です。
ここには、体や脳の働きを直接左右する重要な情報が詰まっています。
研究チームは、数十万以上もある遺伝情報の中から、“まれだけれどもADHDの発症に影響が大きい”変化を徹底的に探し出しました。
その結果、ADHDのリスクを強く押し上げる3つの遺伝子が浮かび上がってきたのです。
ひとつめはMAP1A(Microtubule-Associated Protein 1A)で、神経細胞の形を支える“骨組み”をつくる働きがある遺伝子です。
ふたつめはANO8(Anoctamin 8)で、細胞の外と内でカルシウムイオンの流れを調節する仕組みに関わります。
みっつめはANK2(Ankyrin-B)で、神経が電気信号をスムーズに伝えるための足場を整える役割を担っています。
これらの遺伝子に“タンパク質の形が崩れるような変異”があると、ADHDの発症リスクは5倍から最大15倍にまで高まることがわかりました。
従来の研究では、1つの遺伝子がここまで大きな影響を持つケースはほとんど知られていなかったため、この発見はADHD研究にとって非常に重要な前進です。
さらに興味深いことに、こうした変異を持つADHDの人々は、初等教育のみで学校を終える割合が高かったり、長期の失業や低所得といった社会的な困難を抱えやすい傾向も確認されました。
今回の研究が見せてくれたのは、「ADHDとは単なる“集中力の問題”ではなく、脳を支える遺伝子の仕組みと深く結びついた特性である」という点です。
ただし、見つかった3つの遺伝子だけですべてが説明できるわけではありません。
むしろ、ここから先にこそ、この研究の面白さがあります。
























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