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カタツムリの血から「心臓を冬眠モード」にする成分を発見

2026.01.13 20:05:48 Tuesday

カナダのアルバータ大学(UofA)で行われた研究によって、カタツムリの休眠中に主に現れる不思議な「冬眠因子」を人工合成し、マウスの取り出した心臓に与えたところ、冬眠しないはずのマウスの心臓を冬眠モードにすることに成功しました。

研究ではマウスの心臓を摘出して一時的に血流を止めるなど過酷な処置が行われましたが、カタツムリの「冬眠因子」を与えた心臓では心臓は拍動や機能の回復が速く、ダメージも小さく抑えられたのです。

この研究成果は冬眠動物だけが持つと考えられていた不思議な耐久力の一部が、遺伝要因だけではなく抽出可能な物質として人工合成しうることを示唆する有望な結果です。

研究者たちはまず臓器移植の際の臓器のダメージ軽減への応用を構想しつつ、将来の人工冬眠のような使い方への可能性についても述べています。

研究内容の詳細は2026年1月9日に『bioRxiv』にて発表されました。

An inducer of snail hibernation causes quiescence and hibernation-like cardioprotection, through metabolic rewiring and autophagy, in mice hearts https://doi.org/10.64898/2026.01.08.698452

カタツムリの血から休眠因子を探し出す

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冬になるとクマは眠りにつき、リスは巣ごもりします。

動物の冬眠は、寒さや食糧不足を生き延びるための不思議なサバイバル術です。

呼吸や心拍を極限まで落として休み続けても、冬眠する生き物の体は平気な顔で春を待ちます。

例えば小さな冬眠哺乳類は、心臓の鼓動が1分間に数回になるほど低下しても元気なままで、飢えや酸欠にも驚くほど強いのです。

昔から研究者たちは、「冬眠や夏眠のとき、脳や体が“休め”の合図を出して全身を休眠モードに切り替えているのではないか」と考えてきました。

この研究チームはこの謎の合図役を休眠誘導因子(DIF)と呼び、その正体を追い続けてきました。

しかし、その「休眠の合図を送るもの」がどんな化学物質なのか、長いあいだ誰にもわかっていませんでした。

そこに登場するのが、小さなカタツムリです。

カタツムリは寒さだけでなく、乾燥や高温でも「夏眠(かみん)」という休眠を行います。

殻にふたをしてじっと動かず、過酷な環境をやり過ごすことが知られています。

数カ月ものあいだ「サボって」過ごせるこの習性は、一見地味ですが立派な冬眠術と言えるでしょう。

しかもカタツムリの体は小さいので、血液を採って「冬眠中だけ増える物質」を探しやすいという利点もあります。

(※少なくとも冬眠中のクマの巣穴に入り込んで採血するよりは安全です)

もし、冬眠カタツムリの血から「休眠スイッチ分子」を取り出し人工的に合成したり、それを他のマウスなどの生物にも効果があるかを試せるなら、冬眠研究は大きく前進するでしょう。

カタツムリの血に流れる休眠因子はどんなものなのか?

そしてそれは種を超えて効果を与えることができるのでしょうか?

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