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寒いけどおしゃれのために我慢している
日本の女子高校生は、北海道でも真冬にストッキングも履かずに生足を出している、というのはたびたび話題にのぼります。
「寒くないの?」というのはよく聞かれる疑問で、本人たちにインタビューしている企画も、雑誌やネット記事に多く存在します。
こうした問いに対して、本人たちは「当然寒いけど我慢している」と答えるようです。
しかし、こうした答えを聞いても依然疑問は解消されません。
真冬に肌を晒す寒さというものは、果たして単純に我慢するだけで耐えきれるものでしょうか?
もちろんこうした事例は女子高生の制服に限った話ではありません。
真冬でも肌の露出が多いファッションを楽しむ女性は多く存在します。
海外でも、やはり寒い冬に肌を露出した服を着る女性に対して、「寒くないのか」と考えるのは一般的な現象のようです。
そこで今回の研究の筆頭著者であるロクサーヌ・フェリグ(Roxanne N. Felig)氏は、この疑問の背景にある、彼女たちが冬の寒さを我慢できる心理学的なメカニズムを明らかにしようと調査を行いました。
研究者たちが着目していたのは、自己対象化と寒さの感じ方の関連性です。
自己対象化(self-objectification)とは、他人が自分の外見をどのように知覚・評価するかについて強く意識を向けることです。
例えば、子どもの頃は自分が他人にどう見られているかはさほど気にしておらず、自身の立ち振舞や、身だしなみには無頓着です。
しかし、青年期になると、鏡に映る自分や、カメラを向けらたときに、自分の魅力に対する他人からの評価に意識が向くようになります。
ただ、自己対象化は単純に人からよく見られたい、というだけの感覚とは少し異なり、自分自身も恋愛対象にするような感覚も含んでいます。
水辺に映った自分の顔に恋をしたナルキッソスという神話がありますが、これは心理学的には自己対象化を表す例の一種です。
つまり自己対象化とは、他人からの視線を気にする「見栄」と自分自身をみつめる「自己愛」が含まれているのです。
この自己対象化傾向は、特に女性に強く見られることがわかっています。
男性にもないわけではありませんが、一般的には女性ほど強くはありません。
そして、この自己対象化傾向が高まったとき、空腹感などを感じにくくなるなど、身体感覚への注意が低下するということが指摘されています。
自身の外見に対する意識の増加が、注意力のリソースを消費してしまい、身体の認識に向ける注意力を減らしてしまうというのです。
ここまで聞くとたしかに、冬の寒さの感じ方と、自己対象化傾向が関連するだろうということは想像できます。
「寒さを無視したファッションは、快適さよりも美しさを優先する女性の外見に対する歴史的基準と一致しています。
ビクトリア朝時代のコルセット、ハイヒール、美容整形はすべて、見た目のために不快感に耐えている例と言えるでしょう。
ここでは根本的に同じ心理的メカニズムが働いているのではないかと考えました」
このようにフェリグ氏は、自己対象化理論の枠組みを利用して、今回の現象について調査することにしたのです。