音楽は脳の“総合運動”だった

これまでの知能研究は、テストや学校の成績、仕事の業績といった「重要な場面」でのパフォーマンスばかりに目を向けてきました。
もちろん、こうした場面では知能の差がわかりやすく出るので研究もしやすかったのです。
でも私たちは毎日、家でくつろいだり、スーパーで買い物したり、通勤の電車でスマホを触ったりと、もっと気軽な日常の中でも確実に頭を使っています。
そこで今回の研究チームは、その見落とされた日常のなかに、知性を映す“手がかり”があるかもしれないと考え、「音楽を聴く」という活動に目をつけました。
なぜ音楽なのでしょう?
実は音楽を聴くというのは、脳にとって意外と“濃厚な”活動だからです。
音楽はただ耳に心地よいだけではなく、感情や記憶、集中力やモチベーションまで巻き込む、まさに脳の総合的な刺激だと言われています。
このことから、音楽を選ぶ行動には、その人が日常でどんなふうに頭を使い、何を考え、どういう心理状態を好むのか、そういった微妙な知的特徴がにじみ出ている可能性があるわけです。
ただ既存の手法は問題点がありました。
これまでの音楽と知能を結びつける研究は、多くが「どのジャンルが好きか?」というアンケートや、短時間の実験室内でのテストに頼っていました。
でも人って、「好きな音楽は?」と聞かれると、つい自分をよく見せようと見栄を張ったり、記憶があいまいで実際の好みと違う回答をしてしまったりします。
たとえば中二病を発症している人は、実際にはほとんど聞いていないにもかかわらず「洋楽」と答えるかもしれません。
また自分を高尚で賢いと思わせたい心理がある人は「クラシック」を実際よりも多めに申告してしまうかもしれません。
さらに実際に聞いている曲がゲームやアニメにかかわる音楽がかなり多くても、本人はそれを自覚しておらず、現実に即さない答えを返してしまう場合もあるでしょう。
調査が人間と対面しないアンケートであっても、これらの心理や誤解は影響を与えてしまいます。
そうなると、実際の日常でどんな音楽を選んでいるのかとはズレてしまうわけです。
今回の研究チームは、そうした“建前の好み”や実験室の人工的な状況を避けるために、実際に人々がスマホで聴いている音楽を正確に追跡する方法を取りました。
つまり、「聞いた話」ではなく、「リアルな視聴履歴」を元にして「何が好きだと言うか」ではなく「実際に何を流したか」というより本物に近い音楽の好みと知性の関係を見ようと考えたのです。





















































