深海で見つかった「黄金の球体」は、深海イソギンチャクが残した外皮だった

問題の物体が見つかったのは、アラスカ湾の水深約3250メートルの海底です。
そこは光が一切届かず、極めて低温かつ高圧という、人間にとって簡単には近づけない世界です。
調査にあたっていた研究者たちは、遠隔操作型無人探査機(ROV)で海底を観察している最中に、岩にぴったりと張り付いた「金色の球体」を発見しました。
この物体は直径およそ10センチほどでした。
地上に持ち運んで明るい場所で観察すると、表面は滑らかに光を反射しており、さらに一部には穴のような開口部も見られました。
この異様な見た目から、当初は「深海生物の卵ではないか」という仮説が有力視されました。
ほかにも、海綿やサンゴの一部ではないかといった推測も出されており、研究者たち自身も正体を即座に判断することはできませんでした。
では、なぜこれほどまでに正体の特定が難しかったのでしょうか。
その理由のひとつは、この物体が「生物らしい構造」をほとんど持っていなかったことにあります。
通常、動物であれば口や消化器官などの明確な特徴が見られますが、この球体にはそうした構造が確認できませんでした。
さらに、集めたかたまりの中には微生物などいろいろな生き物のDNAが入り混じっていたため、簡単なDNA検査ではどの生き物のものか特定できなかったのです。
そこで研究チームは、より詳細な分析へと踏み込みます。
顕微鏡観察の結果、この球体の表面には「スピロシスト」と呼ばれる刺胞が存在することが分かりました。
これは刺胞動物の中でも、イソギンチャクやサンゴを含む「六放サンゴ亜綱」に見られる刺胞の一種です。
この時点で、球体が何らかのイソギンチャクやサンゴに近い生物と関係している可能性が強まりました。
さらに決定打となったのが、より深い遺伝子解析であり、この物体は深海に生息するイソギンチャクの一種と極めて近い遺伝的特徴を持つことが明らかになりました。
こうして研究者たちは、発見から3年後に、この「黄金の球体」の正体を突き止めます。
それは未知の生物でも卵でもなく、深海イソギンチャク「Relicanthus daphneae」が残した外皮(クチクラ)と組織の残骸だったのです。
では、この奇妙な構造はどのようにして海底に残されたのでしょうか。























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