その1「ものの見方の柔軟性を保つ」
哲学者の思考法を身につけるうえで、まず最初に重要となるのが「自分の見方だけが絶対ではない」と考えることです。
英国の哲学者バートランド・ラッセルは、1951年に発表した文章の中で、守るべき「十戒」の最初に「何事についても絶対に確実だと思ってはならない」という趣旨の言葉を掲げました。
これは、何も信じてはいけないという意味ではありません。
現在の自分が正しいと思っていることも、新しい情報や別の視点によって修正される可能性があると認める姿勢です。
たとえば、目の前に一本の木があるとします。
ある人にとって、木は「日陰で休むための場所」かもしれません。
子どもにとっては「登って遊ぶもの」であり、芸術家にとっては「美しさを楽しむもの」、寒い地域で暮らす人にとっては「薪の供給源」になるかもしれません。
木そのものは同じでも、どの目的や立場から見るかによって、見えてくる意味は変化します。

私たちは一度ある見方を採用すると、それが対象そのものの唯一の姿であるかのように感じてしまいがちです。
しかし哲学的に考えるには、現在の見方を少し緩め、別の捉え方に切り替える必要があります。
さらに、視点の距離を変えることも大切です。
自分が抱えている悩みを、私生活から離れて、宇宙や人類史という大きな視点から眺めれば、問題が少し小さく感じられるかもしれません。
実践方法:視点の距離と立場を変えてみる
なにかに悩んだときは、まず「自分とは異なる立場の人には、これはどう見えるだろう」と考えてみます。
上司と部下、親と子ども、消費者と販売者、あるいはアリやクジラといった他の生き物など、立場を入れ替えて考えるだけでも、問題の別の側面が見えてきます。
また、「この問題を10年後の自分が振り返ったら、どう感じるだろう」と時間軸を広げる方法もあります。
それから、自分が生きている間には結果が出ない問題について考えることも有効です。
奴隷制度廃止運動家や社会改革者たちは、自分では成長した姿を見ることのできない木を植えるように、未来の変化のために行動しました。
目の前の利益だけでなく、自分の人生を超えた時間軸で考えることも、ものの見方を柔軟にする訓練になるのです。



























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