重い腕では差がつかず、道具を使うと利き腕が優位になった
右利きの人が右手で上手に文字を書けるのはなぜでしょうか。
代表的な考え方の1つでは、右手側の運動を担当する脳半球が、生まれつき複雑な動作の制御に優れているからだとされていました。
一方、研究チームは、利き腕が器用なのは、文字を書く、箸を使う、物を投げるといった作業を、幼いころから同じ側で繰り返してきたためではないかと考えました。
この二つの説明を比べるため、研究チームは神経学的に健康な右利きの若年成人に、限られた時間内に左右の腕で机上の5つの標的へ手を伸ばしてもらいました。
動作時間は約350ミリ秒にそろえ、2台の高速カメラを使って、腕や手先が通った軌道を三次元で記録。
実験には、手のひらで標的に触れる通常条件、手首に4ポンド(約1.8キログラム)の重りを付ける条件、前腕に83グラムの軽い竹の棒を取り付け、その先端で標的に触れる条件が用意されました。
通常条件には23人、重り条件には10人、棒条件には11人が参加しました。
通常の腕伸ばしでは、非利き腕の軌道は5つの標的のうち4つでややばらつきが大きかったものの、左右差は限定的でした。
また、手首に重りを付けると左右とも動きが不安定になりましたが、利き腕だけが重さにうまく対応するという明確な優位性は確認されませんでした。
この結果は、利き腕側の脳が腕の重さや慣性を処理する能力で常に優れているとは言えないことを示しています。
ところが、軽い棒の先端で標的に触れる条件では、明確な左右差が現れました。
棒を使うと、参加者はまず先端を標的の近くまで運び、その後、位置を細かく調整する二段階の動きを見せました。
左右の腕とも軌道の後半が曲がる特徴を示しましたが、非利き腕では、この複雑な軌道を安定して再現できず、試行ごとのばらつきが大きくなったのです。
棒は非常に軽いため、約1.8キログラムの重りほど腕の力学を変化させません。
それでも利き腕の優位が現れたことから、利き腕の強みは重さへの対応ではなく、ペンや箸の先端のような「道具の先」を、目的の軌道に沿って正確に導く技能にあると考えられます。
確かに利き手は器用さの面で有利なようです。では、この器用さは「生まれつき」なのでしょうか。






























