オスなしで増える微小動物ヒルガタワムシ、染色体の修復を世代を超えて行っていた
オスなしで増える微小動物ヒルガタワムシ、染色体の修復を世代を超えて行っていた / ワムシの一種(微分干渉顕微鏡)。Credit: Alexander Klepnev / Wikimedia Commons (CC BY 4.0)
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オスなしで増える微小動物ヒルガタワムシ、染色体の修復を世代を超えて行っていた

2026.09.15 14:26:58 Tuesday

コピーを重ねた書類は、いつか読めなくなる。オスを持たない生き物の設計図も、そうなるはずだった。

生き物には、切れたDNAをつなぎ直す相同組換え(そうどうくみかえ、同じ並びを持つ染色体を手本に、切れた場所を直す仕組み)があります。

有性生殖をする生き物では、この仕組みが減数分裂のときに染色体どうしを引き合わせ、遺伝子を子へ配る役目も担っています。

ヒルガタワムシの一種アディネタ・ヴァガは、オスを介さずに増えます

DNAを傷つけるような過酷な環境に、並外れて強いことでも知られる動物です。

研究チームがこのワムシのゲノムを調べると、卵ができるときに、有性生殖と同じ型の組換えが起きていました。

その組換えは、DNAの傷を直すためにも使われていました。

壊れた染色体は一世代では直りきらず、世代を重ねながら少しずつ元に戻る。

研究チームはこの修復のモデルをBIHER(切断をきっかけに、相同な配列を伸ばして直す修復)と名づけ、データがこれを支持すると述べています。

調べたのは実験室で育てた系統で、乾燥を4回くり返した11系統と、水につけたままの11系統。

では、その「元に戻る」は、ゲノムのどこに残っていたのでしょうか。

研究内容の詳細は2026年9月11日に『Science Advances』にて発表されました

Transgenerational chromosome repair in the asexual bdelloid rotifer Adineta vaga (Science Advances) https://doi.org/10.1126/sciadv.aee0891 Extreme resistance of bdelloid rotifers to ionizing radiation (PNAS) https://doi.org/10.1073/pnas.0800966105 DNA repair during nonreductional meiosis in the asexual rotifer Adineta vaga (Science Advances) https://doi.org/10.1126/sciadv.adc8829 「クローンからクローン」は58世代目が限界、”突然変異”が蓄積する(ナゾロジー) https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/193344
Transgenerational chromosome repair in the asexual bdelloid rotifer Adineta vaga https://doi.org/10.1126/sciadv.aee0891

乾燥を4回くり返し、ゲノムの「そろい」を数える

乾燥を4回くり返し、ゲノムの「そろい」を数える
乾燥を4回くり返し、ゲノムの「そろい」を数える / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

手がかりになったのは、ヘテロ接合性(2本ある染色体の同じ位置で、配列が違っていること)です。

祖先ではばらついていた場所が、子孫ではそろってしまう。

この「そろい」がどこに、どれだけ現れるかを、世代を追って数えました。

実験は、世代ごとに子を1匹だけ選んで続ける形で行われた。

選択の働きを弱め、偶然起きた変化がそのまま残るようにするためです。

片方は水につけたまま、もう片方には10日間の乾燥を4回くり返しました。

たどった世代数は、乾燥させた系統でおよそ75、水につけたままの系統でおよそ135。

終点では、祖先でばらついていた場所のうち、平均4.23%がそろっていました。

揃う速さは、乾燥させた系統のほうが速い。

ただし、そろい方には二つの原因があり得ます。

一つは、その部分がまるごと失われる欠失。

もう一つが、対になるもう1本の染色体を手本にした組換えです。

二つを分けるのは、その場所の配列がどれだけ読み取れたかです。

読み取れた量が減っていれば、欠失。

量はそのままで配列だけがそろっていれば、組換えの跡です。

染色体の端には似た配列のくり返しが多く、読み取りがずれて偽の信号を生みます。

そこで、ゲノムを50〜100キロ塩基(染色体の長さの250分の1ほど)ずつに区切り、祖先と子孫を見比べて、こうした偽の信号を抑えています。

次ページ一度失われた領域が、二本そろった状態に戻っていた

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