中枢部は確かに黒字だが……
今回の研究で、核融合炉の燃料に注がれたエネルギーよりも燃料から発生するエネルギーが多い状態を作り出すことに、世界ではじめて成功しました。
しかし黒字化が成功したのは中枢にある燃料を中心とした反応のみだったのです。
今回の核融合ではまず外部から電力が供給され、その電力が1.9MJのレーザーに変換され、さらにレーザーがX線に変換され、燃料に230kJのエネルギーが注がれて、最終的に燃料からは1.3MJのエネルギーが発生しました。
燃料に直接注いだエネルギーは230kJで燃料から発生したエネルギーが1.3MJ。確かに黒字です。
しかし燃料に230kJを注ぐには外部から1.9MJの出力のレーザーを必要としていたのです。
つまり燃料まわりの「一部黒字」化は達成したものの、全体としては依然と赤字でした。
原因はエネルギーロスでした。
電力・レーザー・X線とエネルギーの形が変化することで、それぞれの段階でロスが生じていたのです。
そのため1.9MJのレーザーを発射しながら、燃料には230kJしか届けることができませんでした。
研究者たちは今後、エネルギーロスを減らすことで、最終的なエネルギー収支をプラスにできると考えています。
最も難関であった中枢部の黒字化は達成したので、あとは詰め作業がメインとなるでしょう。
核融合発電の実現まであと一歩ですが、最後の一歩が最も大変なのは、他の全ての仕事と同じなのかもしれません。