生産効率が従来の800倍
開発された合成生物の性能を検証するため、研究者たちはさっそく細菌に二酸化炭素を与え、生産される薬品の量を測定しました。
すると従来の細菌に比べて、この合成生物は生産効率が800倍近く上昇していたのです。
さらに、アセトン1kgを生産するにあたり1.78kgの炭素が、イソプロパノール1kg生産するにあたり1.17kgの炭素が消費されていることが判明したのです。
これは現代の炭素排出量を気にする社会においては画期的なことです。
なぜなら従来の方法では、アセトンやイソプロパノールの生産には石油が使われており、これらを生産すると二酸化炭素が排出される状況となっていました。
石油を材料に製造する場合、アセトン1kgを作るには2.55kg、イソパノール1キロを作る際には1.85kgの二酸化炭素が放出されていたのです。
研究者たちは合成生物を用いた製造法が普及した場合、これらの化学薬品の製造時に排出される温室効果ガスの量は、石油による生産時のマイナス160%になると算出しました。
つまりこれまで薬品生産で排出されていた二酸化炭素量の60%分が、逆に大気中から失われていくことになるのです。