空気中の「二酸化炭素を発酵」させてアルコールを作成することに成功!
人類は古くから微生物の行う発酵を利用して、お酒やチーズなどの食品を作り出してきました。
糖分やタンパク質、脂質は、無数の炭素原子が連なった巨大分子で、これは多くのエネルギーを保持していて、分解することでそのエネルギーを放出させることが可能です。
私たちの脂肪がエネルギー貯蔵の役割を果たすのも、こうした理由からです。
そのため多くの細菌たちは、有機分子の分解時に発生するエネルギーを目当てに発酵に手を貸してくれるのです。
そして地球上に生息する細菌たちには分解するにあたって、好みの炭素数があることが知られています。
デンプンやタンパク質など多くの炭素を含む分子を分解するのが好きな細菌んもいれば、ほんの数個の炭素しか含まない小分子の分解を好む細菌も存在します。
では1個の炭素しか含まない二酸化炭素(CO2)の分解を好む生物は存在するのでしょうか?
答えは「存在する」のようです。
驚くべきことに、いくつかの細菌(嫌気性アセトジェンなど)は光を使うことなく、植物と同様に二酸化炭素を分解してエネルギーを生産することができるのです。
つまり通常の微生物がデンプンやタンパク質をたべる一方で、一部の細菌は二酸化炭素を「食べる」ことが可能なのです。
またこれら奇妙な細菌は、二酸化炭素を「食べる」とアセトンやアルコールの一種であるイソプロパノールといった、消毒薬や保存薬に用いる価値ある化学薬品を「排出」します。
イソプロパノールはエタノールよりも新型コロナウイルスに対して高い効果がある殺ウイルス剤として、現代社会になくてはならない消毒薬として知られています。
またアセトンも工業的な利用価値が高い化学物質であり、プラスチック・合成繊維などの生産に必須の薬品になっています。
ただ自然界に存在する細菌が化学薬品を生産する効率はあまり高くなく、商業への利用は進んでいませんでした。
そこで今回、LanzaTech社の研究者たちは、薬品の生産効率をあげるために、複数の細菌から優れた遺伝子を抽出して合成することで、自然界には存在しない合成生物(人工細菌)を作り上げました。
新たに創造された合成生物は、どのくらいの二酸化炭素を吸い込み、どれほどの化学薬品を作る能力が強化されたのでしょうか?