歌だけに反応する脳回路を発見!
「ノーミュージック、ノーライフ」と言うように、人生における音楽の重要さは多くの人々が共感するところです。
脳科学の分野でも音楽研究は盛んであり、近年の研究では、ヒトの脳には音楽にのみ反応する専門の音楽回路や、ヒトの音声に対して特に鋭く反応する音声回路があることが知られるようになってきました。
専門回路の存在は音声や音楽を、その他の雑音と区別することに役立っていると考えられます。
では音声と音楽のミックスである「歌」は脳内でどのように表現されているのでしょうか?
考えられるパターンとして有力視されていたのは、音声と音楽を認識する両方の脳回路を「借用」している可能性と、歌を認識する別の専門回路が存在する可能性でした。
そこで今回、MITの研究者たちは、人間ドックなどに使われる「MRI技術」と脳に電極を直接あてて電気活動を調べる「ECoG技術」を組み合わせ、脳内で歌がどのような神経回路によって処理されているかを調べることにしました。
(※脳への電極挿入は、てんかん治療の過程で行われました)
具体的には、ヒトの会話音声や楽器演奏、歌、雑音など165種類の音を被験者に聞いてもらい、MRIと電極によって測定された神経活動パターンを収集しました。
結果、ヒトの脳には歌だけに反応する専門回路(歌回路)が存在することが判明したのです。
この歌回路は会話音声や楽器演奏ではほとんど活性化しない一方で、ヒトの歌声に対しては鋭く反応して独自の神経パターンを構築しました。
つまりヒトの脳は、歌を音声や音楽のミックスとして認識するのではなく、「歌」という独自のジャンルで識別していたのです。
また歌回路は側頭葉の上部にある、音声と音楽の専門回路の間に存在していることも判明しました。
この結果は、歌はまず歌回路で認識・処理され、次いで音声回路と音楽回路に処理情報が伝えられることを示唆します。
歌は人間の脳にとって音声でも音楽でもなく「歌」であり、音声や音楽的な理解はあくまで付随的なものだったのです。
そこで問題となるのが、歌回路が先天性のものか後天性のものかです。