歌のあるメロディーのほうが記憶に残る
歌う能力が何の役に立つのか?
理由の1つには、声を出す声帯の調節力と歌の関係があげられます。
声帯の調節能力は発話能力と一体であり、その力の高さは言語能力の高さと関連します。
高い言語能力を持つことは生存にとって非常に有利であるため、進化のある段階では、歌の上手さが「生存能力の高さ」を表す指標になった可能性があります。
歌が上手いと、異性と交配するチャンスも増えて、子孫を残しやすくなったと考えられます。
つまり、歌が上手いとモテたわけです。
現代社会においても歌の上手さがモテ率と関係しているのは、もしかしたら言語能力の高さを欲する太古の遺伝子のせいかもしれません。
また別の理由として考えられるのは、歌による神経回路の強化です。
これまでの研究によって、歌があるメロディーのほうが、楽器のみを用いたインスト音楽のメロディーよりも強く記憶に残ることが知られています。
なぜ歌が情報記憶を強化するかという神経メカニズムは謎ですが、歌回路という別系統の情報経路を利用することで、多方面から刺激された神経回路が強化されると考えられます。
また、歌には音楽に比べて感情を刺激する効果が高いことが知られています。
任意の記憶に感情を付加することができれば、記憶効率のさらなる強化につながるでしょう。
つまり、歌って覚える能力を持っている個体のほうが、厳しい生存競争の勝者になった、というわけです。
研究者たちは今後、歌や音楽の持つ神経コードを解明していくとのこと。
特定の歌やメロディーが、人間の神経回路でコードされていく過程を調べることで、歌や音楽が持つ力の源が解明されるかもしれません。