DNAの接着剤の役割を果たすタンパク質が見つかる!
人間の細胞は、常に外部と内部からのダメージにさらされています。
特にDNAは非常に繊細で、1日に数千か所も損傷を受けることが分かっています。
このDNA損傷の中でも特に深刻なのが「二本鎖切断(DSB)」です。
これはDNAの両鎖が同時に切断されるもので、適切に修復されなければ細胞の死、あるいはがん化を招く原因となります。
多くの細胞は分裂を繰り返すことで新しい細胞に置き換えられますが、神経細胞のように分裂しない細胞では、こうした損傷が蓄積する一方です。

このことが、アルツハイマー病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経変性疾患と深く関わっていると考えられています。
そうした中で今回注目されたのが「PDI(Protein Disulfide Isomerase)」または「プロテインジスルフィドイソメラーゼ」というタンパク質です。
PDIはこれまで、小胞体という細胞内の構造で、他のタンパク質の折り畳みを補助する酵素として知られていました。
ところが、今回のマッコーリー大学の研究によって、PDIが細胞の核へと移動し、損傷したDNAの修復に直接関与していることが明らかになったのです。
まるで接着剤のように振る舞いますが、実際にはPDIの酸化還元活性がDNA修復の化学反応を促進しているのです。
この発見は、老化に伴って進行する神経変性疾患の新しい治療戦略に繋がる可能性を秘めています。
では、具体的にどんな研究が行われたのでしょうか。