AIは「絶滅した言葉」を知っているのか?
研究チームはまず、ChatGPT(バージョン4o)に対して、「19世紀には存在したが、現代ではほとんど使われなくなった英単語」を52語選び、それぞれに「この単語の意味は?」と質問を投げかけました。
たとえば「アップノッキング(upknocking)」という単語は、かつてイギリスで存在した「目覚まし人」という職業を指します。
これは眠っている人を起こす職業を指し、目覚まし時計の普及とともに姿を消しました。
現代の英語話者がこのような単語を知っている可能性はほとんどありませんが、実験の結果、ChatGPTはなんとその約7割にあたる36語について、正確な意味を答えることに成功したのです。
これは人間の記憶には限界がある一方で、AIは過去の膨大な文献を記憶し続けることができるという可能性を示しています。
つまり、ChatGPTは“忘れられた言葉”を蘇らせるタイムカプセルのような存在ともなりうるのです。

とはいえ、完璧だったわけではありません。
11語については「この単語は英語辞書に存在しない可能性があります」と回答し、5語については完全に間違った意味、いわゆる「ハルシネーション」を起こしました。
ハルシネーションとは、簡単に言えば、AI(人工知能)が不確かな情報をあたかも真実のようにでっちあげる現象です。
たとえば「flothery」という言葉を「ふわふわした柔らかさ」と解釈しましたが、本来の意味は「だらしないのに見栄を張っている様子」です。
この結果は、ChatGPTがあくまで確率的な言語モデルであり、常に正解を知っているわけではないことを示しました。