意味のない言葉はどう「理解」するのか?
別の実験では、「意味を持たないナンセンスな単語(nonwords)」を使って、ChatGPTの言語感覚を試しました。
たとえば、意味のない英単語風の造語(例:「glerm」「wask」など)について、「どれくらい“英単語っぽく”聞こえるか」を1〜7点で評価させるタスクも実施されました。
これはそのナンワードがどれほど英語らしく聞こえるかを判断させるものであり、その評価を英語話者の人間による評価と比較。
結果、ChatGPTの評価は人間のネイティブスピーカーと高い相関を示し、同時に「その語がブランド名だったら買いたいか」という判断にも類似した傾向を見せています。
またチームは、ChatGPTに新しい概念を表す新語を作らせる実験も行いました。
この新語創作タスクで、ChatGPTはなかなか興味深い仕事をし、多くの場合、ChatGPTは2つの単語を組み合わせるという予測可能な方法で新語を生み出していました。
その結果として以下のような新語が作られています。
・ラウズレイジ(rousrage):目覚ましで起こされたときの怒り
・プライディファイ(prideify):他人の成功を自分の誇りに感じること
・スタンブロップ(stumblop):自分の足につまずくこと
・レクシナイズ(lexinize):ナンセンスな語が意味を持ち始める過程
これらは実在しない言葉ですが、実際の単語の構造や意味の組み合わせを巧みに利用しており、AIの“擬似的な創造性”を垣間見ることができます。

この研究は「意味のない言葉」を使うことで、ChatGPTの内側にある“言語感覚”を探る試みでした。
結果として、ChatGPTは人間と似たようなパターン認識や判断を行う一方で、文脈や常識、文化的なルールにはまだ不完全という限界も明らかになりました。
それでも忘れられた単語を呼び起こしたり、新しい言葉を提案したりする能力は、人間の記憶や発想を補う「言語のパートナー」としての可能性を秘めています。