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Credit:Joshua Méndez Harper and Benjamin Crall
physics

ピクルスが電気で光る謎現象――実は水素爆発と火花が鍵だった

2026.07.08 22:20:18 Wednesday

「火災報知器が鳴らないことを祈ります」

米国静電気学会の年次大会の会場で、アメリカのポートランド州立大学(PSU)のメンデス・ハーパー氏が取り出したのは、ピクルスの瓶と電源タップ、そして2本の電極でした。

会場に笑いが起きる中、彼はピクルスの両端に電極を突き刺し、スイッチを入れます。

ジュージューという抗議するような音。

焦げたような匂い。

そして——ピクルスの片側が、鮮やかなオレンジ色に光り始めました。

実はこれ、科学の世界では「光るピクルス」として30年以上前から知られている定番の余興です。

しかし驚くべきことに、「なぜピクルスが光るのか」は、科学者たちの間でも長年はっきりとは解明されていませんでした。

メンデス・ハーパー氏のチームが2026年の学会で発表した研究は、この謎にようやく有力な答えを示すものでした。

Shining light on glowing pickles. https://electrostatics.org/wp-content/uploads/2026/06/FinalProgram.pdf

「食べられる電線」——なぜピクルスに電気が通るのか

「食べられる電線」——なぜピクルスに電気が通るのか
「食べられる電線」——なぜピクルスに電気が通るのか / Credit:Joshua Méndez Harper and Benjamin Crall

「ピクルスが光る」と聞いて、まず不思議なのは「そもそもピクルスに電気が通るの?」ということでしょう。

答えは「通る」——それもかなりよく通ります。

ピクルスは塩水と酢の漬け汁にどっぷり浸かっています。

食塩(塩化ナトリウム)は水に溶けると、電気を帯びた小さな粒に分かれます。

この粒は「イオン」と呼ばれ、電気を運ぶ役割を果たします。

イオンがたっぷり溶け込んだピクルスの内部では、電気がスイスイ流れるのです。

言ってみれば、ピクルスは「食べられる電線」のようなものです。

では、あのオレンジ色の光の正体は何でしょうか。

光の謎については1993年の報告がヒントになります。

1993年、アプリングらの研究チームがピクルスの光を分析しました。

すると、波長約589ナノメートルの黄色い光がナトリウム(Na)原子から放出されていることが示されました。

原子にはエネルギーを外部から与えられると、周りの電子が一時的に高いエネルギー状態に上がり、その後すぐにエネルギーを光(電磁波)の形で放出して元の状態に戻ることが知られています。

そして放出する光の色のパターンは、原子によって個性があるのです。

ならば塩の種類を変えたらどうなるか——2005年、リゾらの研究チームがその問いに挑みました。

通常の塩(NaCl)ではなく塩化リチウム(LiCl)の溶液で漬けるとピンク、塩化カリウム(KCl)で紫、塩化ストロンチウム(SrCl₂)で赤。

塩素(Cl)の相方となる金属元素(Na、Li、K、Sr)の種類によって、ピクルスがさまざまな色に光ることが確認されたのです。

これは花火の光の色(炎色反応)と色のパターンがほぼ同じで、その根本的な原理(電子遷移)も同じです。

さながらピクルスの中で行われる花火大会というわけです。

しかし、普通塩水にただ電気を流すだけでは、目に見えるナトリウムの光は出ません。

ナトリウム(Na)を光らせるにはその電子を激しく揺さぶるほどの瞬間的なエネルギーが必要だからです。

そうなると考えられる道筋も見えてきます。

エネルギー源は電気なのは確定として、その後にピクルスの中で「何か激しい現象」が起こり、その現象がナトリウム(Na)の電子を揺さぶるエネルギーを供給したというものです。

では、その「激しい何かの現象」とは何だったのでしょうか?

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