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Credit:Joshua Méndez Harper and Benjamin Crall
physics

ピクルスが電気で光る謎現象――実は水素爆発と火花が鍵だった (2/3)

2026.07.08 22:20:18 Wednesday

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ピクルスが電気で光る理由

ピクルスが電気で光る理由
ピクルスが電気で光る理由 / Credit:SFU . 5D30.30 Glowing Pickle

その正体をめぐって、長年2つの仮説が競い合ってきました。

ひとつは「火花」説です。

電極のそばでは漬け汁が激しく熱せられ、沸騰して蒸気の塊ができます。

蒸気は液体よりも電気を通しにくいので、電流の行き場が一瞬ふさがれます。

すると、行き場を失った電気が蒸気の隙間を無理やり飛び越えて火花を散らす——冬場にドアノブで「パチッ」と静電気が飛ぶのと似た現象です。

この火花のエネルギーがナトリウムを光らせている、という考え方でした。

もうひとつは「水素点火」説です。

電流が流れると、ピクルスの中の水が水素と酸素に分解されます。

理科の授業でおなじみの「電気分解」です。

問題は、水素と酸素が混ざった気体は爆発性があるということ。

電極付近の高温でこの混合気体に火がつき、小さな爆発が発生し、そのエネルギーがナトリウムを光らせているのではないかという考えです。

一部の研究者は「両方が関係しているのでは」と推測してもいました。

しかし、交流と直流を比べて、この2つの説の関係を絞り込む研究は、長らく限られていました。

そこに切り込んだのが、メンデス・ハーパー氏のチームです。

彼らが注目したのは、電流の「性格」の違いでした。

家庭のコンセントから出てくる交流は、電気の流れる向きが絶えず入れ替わる電流です。

一方、乾電池やスマートフォンのバッテリーに使われる直流は、常に一方向に流れ続ける電流です。

チームはピクルスに高速度カメラと水素センサーを取り付け、交流と直流の両方で通電しました。

するとまず交流でも直流でも、ピクルスから水素が検出されたことがわかりました。

しかし実際に光ったのは、交流の場合だけでした。

逆を言えば、直流では水素が出ているのに、ピクルスは一向に光らなかったのです。

もし「水素点火」説だけで光が説明できるなら、水素が発生している直流でも光るはずです。

では水素点火説は間違いで、火花説で確定なのでしょうか?

メンデス・ハーパー氏が2026年6月16日の講演で示したのは、2つが実は「別々」ではなく「同時に」起きて初めてピクルスが光る、という統合モデルを提案したことでした。

ガスコンロを思い浮かべてみてください。

ガス(水素と酸素)だけがシューッと漏れていても、火はつきません。

着火スイッチ(火花)だけをカチカチ押しても、ガスがなければ何も起きません。

ガスと着火スイッチが同じ場所で同時に揃ったとき、初めて「ボッ」と火がつきます。

ではなぜ交流だけでこの連鎖が成立して光ったのでしょうか?

直流でも水素が出ていて、電気の火花が散れば、同じ現象が起きて光ってもおかしくないはずです。

研究者たちは、ここで重要だったのが、火花が飛ぶ舞台となる「蒸気のポケット」を安定して保てるかどうかだと考えました。

交流は電気の向きが絶えず切り替わります。

この「揺さぶり」が、蒸気のポケットを開いた状態に保ちやすくすると考えられています。

一方、直流では、蒸気のポケットが不安定になり、崩れてしまうと考えられます。

火花の舞台が失われれば、水素が出ていても点火は起こりません。

2015年にドイツの物理学者フォルマーとメルマンが高速度カメラで撮影した映像も、このモデルと整合しています。

そしてもうひとつの長年の謎、「なぜ片側だけが光るのか」。

先ほど交流では左右が交互に光ると述べましたが、実際には、汁気が多く反応が活発な側のほうが強く光ります。

そのため全体としては「いつも同じ側が光っている」ように見えるのです。

では、その「いつも光る側」を決めているものは何か——

こちらの答えは拍子抜けするほど素朴でした。

「汁気の多い側」が光る。

それだけです。

ピクルスを縦に立てると、重力で漬け汁が下にたまります。

塩水が多い場所ではイオンが豊富で電気がよく通り、火花と水素の連携反応がより活発に起こると考えられます。

だから下端が光ります。

上下を入れ替えれば、光る側も変わると考えられます。

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