ヒトは生まれたときから「歌」を知っている
ヒトの脳には音声や音楽、読書や自転車に乗るスキルなどを取り扱う、さまざまな神経回路が存在します。
これら神経回路には、人類が生まれながらに形成できる先天的回路と、学習や経験によって形成される後天的回路が存在します。
先天的回路の効力として考えられるのが「4」まで数える能力です。
人間には一切の教育を受けなくても「4」までを直感的に認識できる能力があります。
(※しかし「5」以降にかんしては「数字の名詞」を知らない場合、正確に認識できません。)
一方、後天的回路と考えられているのが読書能力です。
人類が文字を発明したのは進化の歴史において直近であり、それゆえに脳は厳密な意味での、先天的読書回路が存在しません。
人類が読書を行えるのは、狩猟採集生活を通して身に着けた短期記憶力や形状判別力を転用して、読書用の神経回路を後天的な学習によって獲得しているからです。
(※読書能力の転用元である短期記憶や形状判別能力をアクションゲームなどで訓練することで、読書能力の底上げも可能であると報告されています。)
では、歌を専門的に認識する「歌回路」は先天・後天のどちらなのでしょうか?
研究者たちは「歌回路は先天的回路である可能性が高い」と述べています。
その理由としてあげられるのが「歌」の存在の普遍性です。
どの人類社会を調べても、何らかの形態の「歌」と呼べるものが存在しています。
そして「歌」に必要なテクノロジーはありません。
そのため、人類にとって「歌」は自然で本能的な行為であると研究者たちは考えています。
しかし歌回路が先天的なものだとしたら、なぜ人類はそのような進化を遂げたのでしょう?
歌う能力は進化上、どのような利点があったのでしょうか?