脳細胞が過敏化して「覚醒信号の早漏」を引き起こす

夜中に目が覚める現象はナルコレプシーの裏の顔なのか?
答えを探るため、研究者たちはまず、若い健康なマウスと年老いたマウスの睡眠状態を調べました。
すると老マウスでも人間の高齢者と同様に睡眠の断片化が起きていると判明します。
加齢にともなう睡眠の質の悪化は、人間でもマウスでも共通した現象だったのです。
(※一般的なマウスの睡眠時間は昼間です)
次に研究者たちは、マウスの脳細胞「オレキシンニューロン」の活性度を調べました。
オレキシンニューロンの働きは覚せい状態の維持に必須であり、このニューロンに重度の欠損がある人々は「ナルコレプシー(1型)」を引き起こすことが知られています。
もし老マウスの脳内でオレキシンニューロンが逆に過剰生産されていれば、ナルコレプシーと反対の睡眠中に突然目覚める現象が起こる原因となっているハズです。
ですが意外なことに結果は逆でした。
老マウスの脳内では「オレキシンニューロン」の数が増えるどころか、最大で38%も失われていたのです。
つまりオレキシンニューロンの数だけを考えれば、老マウスは覚せいに必要な細胞を失ったのだから、より眠りやすくなっているはずで、目覚めやすくなることはないはずです。
しかし脳科学において細胞の絶対数の少なさは、必ずしも活動量の低下に結びつきません。
実際、研究者たちが老マウスのオレキシンニューロンの電気的な性質を調べたところ、活性化の「しきい値」が大幅に下がっていたことが判明します。
(※カリウムイオンチャンネルが減少して十分な分極ができず、常に発火しきい値の近くにあった)
つまり老マウスの覚醒をつかさどる脳細胞は数こそ減っていたものの過敏状態になっており、ちょっとした刺激に対しても、脳に覚醒信号を発するようになっていたのです。
マウスと同じような仕組みが人間にある可能性は非常に高く、人間の加齢にともなう夜中の突然の目覚めもまた脳細胞の過敏化と「覚醒信号の早漏」によって引き起こされていると考えられます。
(※早漏はもともと射精障害を示す医学用語であり、侮蔑的な意味はありません)
ではもし、この「覚醒信号の早漏」を防ぐことができれば、夜中に突然目覚める逆ナルコレプシーもなくなるのでしょうか?

























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