「太ももの骨」が時代ごとに変化していた
ティラノサウルスは、約6800万~6600万年前の白亜紀末に、北アメリカ大陸に生息した肉食恐竜です。
この時期は恐竜時代の最後にあたり、隕石の落下により突然、終わりが告げられました。
ですから、ティラノサウルスもまだまだ志半ばだったでしょう。
研究チームは今回、37体のティラノサウルス標本を対象に、骨や歯形を分析しました。
このうち24体の大腿骨(太ももの骨)を比較してみると、頑丈なものもあれば、華奢なものもあることが示されています。
また個体間で、頑丈な骨のほうが、華奢な骨より2倍多く見られました。
これは、骨の堅牢性が性別による違いではないことを示唆しています。(そうであればもっと均等に分かれる可能性が高い)
さらに、小さな幼体の標本から頑丈な骨が、大きな成体の標本から華奢な骨が見つかっており、成長とも関係していないことが示されました。
「頑丈な祖先」から「華奢な子孫」が派生した?
37体のうち28体は、北米のマーストリヒチアン層上部(約6750万~6600万年前)で発掘され、どの位置から出土したかも分かっています。
この情報をもとに、ティラノサウルスの骨格が時代ごとに、どう変化しているかを調べました。
まず、下層からは頑丈な大腿骨をもつティラノサウルスのみが出土しています(6体)。
この時点では、ティラノサウルスは1種しかいなかったと見られます。
ところが中層になると、華奢な大腿骨のティラノサウルスが1体だけ確認され、上層では、頑丈な大腿骨と並んで、華奢な骨も5体見つかりました。
骨の堅牢性のばらつきは、古い時代に比べて、時代ごとにどんどん大きくなっています。
つまり、上層で見つかったティラノサウルスは、下層の個体に比べて、明らかに形態が進化・発達しているのです。
研究主任のグレゴリー・ポール(Gregory Paul)氏は、こう話します。
「ティラノサウルスの大腿骨の変化は、性別や年齢に関係しないことが確認されました。
これは、より頑丈な大腿骨を持つ共通祖先から、華奢な骨を持つものも含め、ティラノサウルスが多様化した可能性を示すものです」
では、ティラノサウルス・レックスの他に、候補となるのはどんな種でしょうか?