目に見えない序列の概念を可視化する
社会的な動物であるオオカミやライオンでは、社会的な序列の概念が存在します。
序列は集団においてさまざまな影響を与えますが、中でも最も大きな影響がみられるのは「エサを食べる順番」です。
エサを得るために最も貢献した個体であっても、序列が低い場合は空腹を我慢せねばなりません。
序列は目にみえない概念でありながら、動物たちの行動を支配しているのです。
しかし脳科学の分野において「概念」はみえない存在ではありません。
特定の「概念」が存在するには、脳内において対応する神経メカニズムの構築が必要であるとわかってきたからです。
そこで今回、ハーバード大学の研究者たちは社会的な序列や競争力の根源となる神経メカニズムをマウスを用いて解明することにしました。
マウスも社会的な動物であることが知られており、エサに対するアクセス権は序列に大きく影響されます。
そこで研究者たちは、マウスのさまざまな脳部位(のべ数千カ所)に電極を刺し込み、他の複数のマウスとエサをめぐる競争を行っているときの電気活動を記録しました。
(※エサ場は頭を突っ込むような狭い小屋の中にあるため全員がアクセスできません、そのため食べる順番は必然的に競争になります)
結果、前帯状皮質と呼ばれる脳領域において、社会的序列の「概念」を形成する脳細胞の一団を発見しました。
これらの脳細胞の活性レベルと競争結果が強く関連しており、研究者たちは脳細胞の活性レベルを調べることで、マウスたちの競争結果を事前に予測できるようになりました。
この結果は、マウス社会の序列が肉体的な強さや攻撃性といった精神的な要因によって決まるのではなく、神経的な表現(神経細胞の活性度)に支配されている可能性を示します。
そうなってくると気になるのが、この脳細胞群(序列細胞)の活性度を操作した場合、何が起こるかです。