動物が「石化」する噂の真相
世界的にナトロン湖が石化する湖として有名になったのは、動物写真家のニック・ブラント氏の報告がきっかけです。
ブランと氏は2011年、東アフリカの失われつつある野生動物をテーマにした写真集『Across the Ravaged Land』(2013年出版)の撮影でナトロン湖を訪れた際、驚愕の光景を目にしました。
ナトロン湖のほとりに、生きたまま石になったかのような動物たちの遺骸が散見されたのです。
その時のことをブラント氏は、こう述べています。
「初めてその光景を見たとき、私は完全に圧倒されました。そしてすぐに、『まるで生きているかのような動物たちの姿をカメラに収めたい』というアイデアが浮かんだのです」
ブラント氏は、地元の人たちと協力し、約3週間かけて最も状態のよい標本を集めました。
そうして撮影されたのが、以下の写真たちです。
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「動物そのものは発見されたときのままであり、私は遺骸を湖面や枝の上に置いただけです」と、ブラント氏は言います。
この動物たちはどのような経緯で石化したのか、正確なプロセスまではわかっていません。
しかし、遺骸には鳥類やコウモリが多いことから、鏡のような湖面の上を飛んでいる間に、方向感覚を失い、墜落した可能性が指摘されています。
その後、湖水の温度や強アルカリ性のために表皮がボロボロになって、そのまま水中で命を落としたのでしょう。
ところが、塩分濃度が高いため腐敗が止まり、塩漬けのような状態で全身がきれいに保存されたと見られます。
そして、湖水の蒸発により遺骸が地表に露出し、乾燥することで、カリカリの石化したような姿になった、というわけです。
湖名の「ナトロン」とは、古代エジプト人がミイラをつくる際に乾燥剤として使った化合物に由来しています。
それでは、ナトロン湖に人が落ちると、どうなるのでしょう?
先の動物たちと同様に、石化してしまうのでしょうか。