ナトロン湖に「人が落ちる」とどうなる?
結論から言いますと、人が落ちても石化することはないでしょうが、笑い話ではすまないケガを負う可能性はあります。
まず、水温がかなり高いので、火傷は免れられません。
さらに、塩分濃度が非常に高いため、もし皮膚に切り傷などがあれば、地獄のようにしみるでしょう。
傷口に塩を塗り込む様子を想像してください。
また、pHは降雨量によって変化しますが漂白剤のように非常に高いため、最悪の場合腐食性の火傷を負うことになります。
幸いなことに、これまで素っ裸でナトロン湖に落ちた人はいませんが、2007年に、動物写真家のグループがヘリコプターで湖に墜落したことがあります。
その時について、同乗していたカメラマンのベン・ハーバートソン(Ben Herbertson)氏は、次のように話しています。
「機体が湖面に衝突し、私たちは水中に投げ出されました。そして次の瞬間、湖水により、目に焼けるような痛みが走ったのです。
また、周囲は30分もすれば脱水症状を起こすほど蒸し暑く、額から汗が流れ落ちて、また塩分が目に入り込んできました」
この事故で死者は出ておらず、ハーバートソン氏らは、地元のマサイ族によって水から引き上げてもらったそうです。
こうした過酷な環境のため、ナトロン湖に近づく動物はほとんどいません。
しかしその中で、フラミンゴの群れだけが湖に適応し、水中を悠々と泳いでいるのです。
フラミンゴの皮膚は非常に丈夫で、強アルカリ性の水にも耐えられます。
また、捕食者が近寄りたがらないことや、狩猟の禁止区域になっていることも手伝って、フラミンゴの人気スポットとなっているようです。
ただ、現在ナトロン湖は砂漠化の影響で縮小を続けており、いずれはこの地域も草原に変わってしまうと予想されています。
けれどそれまでは、この多くの生き物にとって地獄のような湖は、フラミンゴには「楽園」として存在し続けるでしょう。