フィルターなしの携帯型淡水化装置
フィルターなしの携帯型淡水化装置 / Credit:Jongyoon Han(MIT)_From seawater to drinking water, with the push of a button(2022)
technology

海水を飲水に変える! MITが開発した「フィルターいらずの携帯型淡水化装置」 (2/2)

2022.05.02 Monday

前ページフィルターありの携帯型淡水化装置はエネルギー効率が悪い

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ボタン1つで動作する「フィルターなしの淡水化装置」

新しく開発された携帯型淡水化装置には、ハン氏らが10年以上前に開発した技術が利用されています。

その技術は、ICP(ion concentration polarization)と呼ばれており、フィルターを利用せずに、海水内の粒子を取り除くことが可能です。

新しい淡水化システム「ICP」
新しい淡水化システム「ICP」 / Credit:J-WAFS at MIT(YouTube)_2021 World Water Day Judges Choice: Creative Communication – Portable Desal. Unit For Hydration(2021)

ICPプロセスでは、水路(水の流れ)の上下に配置された膜に電圧をかけます。

膜がプラスまたはマイナスに帯電した粒子(塩分子、細菌、ウイルス)を引きよせて取り除き、第2の水路から排出するのです。

これにより、消費電力の小さい低圧ポンプでも、浮遊物質と溶解性物質の両方を除去できます。

そしてチームは、ICPと既存の技術を組み合わせて、エネルギー使用量をさらに抑えた携帯用淡水化装置の開発に成功。

装置は10kg未満であり、1時間あたり0.3リットルの飲料水を生成できます。

しかも1リットル当たりの消費電力はわずか20Wでした。

これは1時間保温の炊飯器と同じくらいの消費電力です。

30分でコップ1杯の飲料水を生成
30分でコップ1杯の飲料水を生成 / Credit:J-WAFS at MIT(YouTube)_2021 World Water Day Judges Choice: Creative Communication – Portable Desal. Unit For Hydration(2021)

実際に海岸で行われたテストでは、装置とつながったチューブを海水に投入してから30分で、コップ1杯ほどの飲料水が出てきました。

淡水化された飲料水は、世界保健機関(WHO)の水質ガイドラインをクリアしています。

世界中の多くの人が、この装置の実用化から益を得るはずです。

とはいえ現段階では、この装置をつくるために高価な材料を使用しなければいけません。

チームは「低コストの材料を使った同様のシステムが登場したらいいですね」と述べており、さらなる進展を見据えています。

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