ボタン1つで動作する「フィルターなしの淡水化装置」
新しく開発された携帯型淡水化装置には、ハン氏らが10年以上前に開発した技術が利用されています。
その技術は、ICP(ion concentration polarization)と呼ばれており、フィルターを利用せずに、海水内の粒子を取り除くことが可能です。
ICPプロセスでは、水路(水の流れ)の上下に配置された膜に電圧をかけます。
膜がプラスまたはマイナスに帯電した粒子(塩分子、細菌、ウイルス)を引きよせて取り除き、第2の水路から排出するのです。
これにより、消費電力の小さい低圧ポンプでも、浮遊物質と溶解性物質の両方を除去できます。
そしてチームは、ICPと既存の技術を組み合わせて、エネルギー使用量をさらに抑えた携帯用淡水化装置の開発に成功。
装置は10kg未満であり、1時間あたり0.3リットルの飲料水を生成できます。
しかも1リットル当たりの消費電力はわずか20Wでした。
これは1時間保温の炊飯器と同じくらいの消費電力です。
実際に海岸で行われたテストでは、装置とつながったチューブを海水に投入してから30分で、コップ1杯ほどの飲料水が出てきました。
淡水化された飲料水は、世界保健機関(WHO)の水質ガイドラインをクリアしています。
世界中の多くの人が、この装置の実用化から益を得るはずです。
とはいえ現段階では、この装置をつくるために高価な材料を使用しなければいけません。
チームは「低コストの材料を使った同様のシステムが登場したらいいですね」と述べており、さらなる進展を見据えています。