ヘビ毒やクモ毒の中に未知の細菌が生息していると判明!
ヘビやクモの毒液の成分が本格的に調べられるようになったのは、20世紀半ば以降であることが知られています。
分析の結果、意外なことに、毒液には強力な抗生物質のカクテルが高濃度で含まれていることが判明しました。
そのため現在に至るまでヘビやクモの毒は致死性が高いものの「無菌」であると考えられていました。
毒ヘビや毒クモに噛まれると危険な感染症にかかることが知られていましたが、これらの感染症は牙や口の内部に生息する細菌が、噛み傷から入ったに過ぎないと見なされていました。
しかし近年になって、複数の抗生物質に対して同時に耐性を発揮する多剤耐性菌、さらには人類の持ついかなる抗生物質にも耐える「スーパーバグ」と呼ばれる超耐性菌が存在することが明らかになりました。
そこで今回、ノーザンブリア大学の研究者たちは改めてヘビやクモの毒に細菌が存在しているかを調べることにしました。
調査にあたっては、コブラやガラガラヘビなどの5種類の毒ヘビとタランチュラなどの2種類の毒クモから毒液が抽出され、生物の痕跡が調べられました。
結果、調査したヘビやクモの毒液のほぼ全てに、多くの細菌が生息していることが判明します。
また興味深いことに毒液中の細菌群たちは、一般的な細菌種の診断キッドでは判別が困難でした。
この事実から研究者たちは、これまで噛み傷に起こった感染症に対して与えられていた抗生物質が、全くの見当違いであった可能性について言及しています。
そこで研究者たちは基本にたちかえって、細菌のDNA塩基配列を解読していく作業に移りました。
DNAの塩基配列を解読する技術はゲノムプロジェクト発足時とは比べ物にならないほど進歩しており、非常に高速な配列決定が可能になっています。
すると毒液に生息する細菌たちは、抗生物質に抵抗するような変異を起こしていることが判明します。
どうやら毒液に生息する細菌群は独自の進化過程をへて、耐性菌へと進化していたようです。
例えばコブラから抽出された毒液には「エンテロコッカス・ファエカリス」というありふれた乳酸菌の生息が確認できましたが、抗生物質への強い耐性を持っていました。
研究者たちは今後、毒液に潜む細菌に対して有効な抗生物質があるかを調べていく、とのこと。
ヘビやクモなど毒を持つ動物に噛まれる事例は世界全体で年間270万件に達しており、その75%が感染症を発症すると考えられています。
これらの感染症が毒液に潜む耐性菌によって引き起こされているならば、感染症対策を抜本的に考え直さなければならないかもしれません。