実用化には「倫理的」な問題も…
一方で、本研究には参加していない、英ウォーリック大学(University of Warwick)のジェームス・コヴィントン(James Covington)氏は、この研究結果を賞賛しつつも、実際の臨床現場で使われるようにはならないだろう、と考えています。
「科学的にはとても興味深いことですが、がん検診の方法として承認するには、非常に多くの課題があるでしょう」
その一つとして、コヴィントン氏は「倫理的な問題」をあげています。
言い換えれば、ヒトのがん検診をするために大量のイナゴの命を奪っても良いのか、という問題です。
たとえば、爆発物の探知用に訓練されたミツバチなどがいますが、彼らは、任務終了後に再び自然に戻ることができます。
しかし、イナゴの場合は一発勝負であり、がんがあろうがなかろうが、確実に死ぬことになるのです。
ただ、今後の研究で、イナゴの脳と触覚の詳しい働きが解明できれば、そのシステムを人工的に模倣した診断ツールが作れるかもしれません。
そうすれば、診断のたびごとに、イナゴの命を奪う必要もなくなるでしょう。