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Credit: UPenn – Penn Engineers Turn Toxic Fungus into Anti-Cancer Drug(2025)
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古代の墓から蘇った「死のカビ」を「抗がん薬」に変えることに成功!

2025.06.25 12:00:12 Wednesday

「ファラオの呪い」は、医学の未来を切り開く鍵だったのかもしれません。

かつて古代エジプトのファラオ・ツタンカーメン王の墓を発掘した考古学者たちが次々と命を落とし、世界中に「ファラオの呪い」の噂が広がりました。

調査の結果、その背後にあったのは、目には見えない“死のカビ”であったことが判明します。

そして今、米ペンシルベニア大学(UPenn)を中心とする研究チームが、その致死性のカビから新たながん治療薬の開発に成功しました。

研究の詳細は2025年6月23日付で科学雑誌『Nature Chemical Biology』に掲載されています。

Penn Engineers Turn Toxic Fungus into Anti-Cancer Drug https://blog.seas.upenn.edu/penn-engineers-turn-toxic-fungus-into-anti-cancer-drug/ Deadly ‘pharaoh’s curse fungus’ could be used to fight cancer https://www.popsci.com/health/cancer-pharoah-curse-fungus/
A class of benzofuranoindoline-bearing heptacyclic fungal RiPPs with anticancer activities https://doi.org/10.1038/s41589-025-01946-9

ファラオの墓にひそんでいた「死のカビ」

1920年代、エジプト・ルクソール近郊でツタンカーメン王の墓が発掘された際、関わった考古学者のうち数人が、発掘から数週間~数カ月のうちに原因不明の病気で亡くなりました。

その不可解な死は、当時「ファラオの呪い」として新聞をにぎわせました。

しかし時がたち、医学の進歩とともに見えてきたのは、ある“微生物”の存在です。

死の原因として浮かび上がった犯人は「アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)」という名前の有毒カビでした。

土の中や古い建物、長年密閉された空間などに潜み、胞子として空中に漂うこのカビは、吸い込んでしまうと肺に感染症を起こすことが知られています。

とくに免疫が弱っている人が感染すると命に関わることもあります。

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アスペルギルス・フラバス/ Credit: en.wikipedia

その後も、このカビが関係していると思われる死亡例が世界各地で報告されています。

1970年代には、ポーランドで王族の墓を発掘していた科学者12人のうち10人が、調査後まもなく命を落としました。

のちに墓の内部からは、やはりアスペルギルス・フラバスが検出されたのです。

黄色い胞子を放つこのカビは、いまや“ファラオの呪いの正体”として認識されるようになりました。

長らく「呪われた微生物」として恐れられてきた存在が、まさか治療薬の希望に変わるとは、誰が想像したでしょうか。

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