アインシュタインによって否定された理論を証明したらノーベル賞だった
その大科学者とは、相対性理論で有名なあのアインシュタインです。
アインシュタインは、物体の状態は人間が観測するかどうかにかかわらず客観的なものとして決まっており、観察によって光の持つ情報がかわったり、その情報が見えない糸でつながった別の光と「もつれ」て影響し合うなど、ありえないと考えていました。
一般人からすれば、相対性理論における空間の歪みや時間の遅れなどのほうが「ありえん」と思えるかもしれませんが、それらを考え付いたアインシュタインにすら「量子もつれ」は受け入れがたいものであり「遠く離れた不気味な作用」との感想を残しています。
アインシュタインが受け入れられないのならば、一般人にとってはなおさら受け入れがたいものであるのは間違いありません。
しかしもし本当だったならば……「量子もつれ」の常識では考えられない真実を物理実験で証明することができれば、人類科学を1ランク上に引き上げるような大発見、まさにノーベル賞クラスの偉業といえるでしょう。
そんなことができる人が、この地球にいたのでしょうか?
若干即落ち的な展開ですが、答えはYESでした。
1964年に理論物理学者のベルが「測定する前には光子の揺れ方向など物体の性質が存在しない」というのが本当ならば、破綻する不等式をうみだすことに成功します。
つまりベルの不等式の破綻が起こる状況を実験で再現することができれば「量子もつれ」が正しいことを証明できるのです。
この難題に最初に成功したのはクラウザー氏(中央)であり、1969年に人類史上はじめて実験的にベルの不等式が破れる可能性があることが証明されました。
次に1982年になるとクラウザー氏の証明はアスペ氏(左)によってより隙がないものへと洗練されます。
そして1997年にツァイリンガー氏(右)によって行われた実験により「量子もつれ」は完璧に証明されました。
また興味深いことに、左右に飛ばした光の間の距離は理論上、いくら離れてても「量子もつれ」が起こることが予想されています。
しかし「量子もつれ」によって、遠く離れた場所にあるものがお互いに見えない糸によって結ばれた「運命的なもの」で繋がっているというのは、いったい何を意味しているのでしょうか?