なぜ今、海の明るさを測るのか

私たちが暮らす地球には、太陽の光が届く「フォトゾーン(有光層)」と呼ばれる海の明るい層があります。
一般に水深約200メートルほどまでの層を指し、海洋生物の約9割がこの光のある領域で暮らしているとされています。
太陽光のおかげで植物プランクトンが光合成を行い、海は地球全体の酸素供給や炭素の循環を支えています。
また、光があることで魚や他の生物も時間帯に合わせた行動ができ、豊かな海の食物連鎖(食物網)や漁業資源が維持されています。
言い換えれば、フォトゾーンは海と地球の生命を支える“青い心臓”ともいえる存在なのです。
しかし近年、沿岸域を中心に海水の透明度が低下し、海が緑色に濁ったり暗くなったりする現象が各地で報告され、海中の光環境の変化が懸念されていました。
栄養豊富な川の水や農業排水が海に流れ込むことでプランクトンが増殖し、水が濁る「グリーン化」や、土砂や有機物の流入で光が減る「暗化」が起きているのです。
とはいえ、こうした変化が地球規模でどの程度進行しているのかはこれまで明らかではありませんでした。
そこで英国プリマス大学とプリマス海洋研究所の研究チームは、衛星データを駆使して約20年間にわたる全球のフォトゾーンの変化を詳しく調べ、この「海の暗化」が世界中で起きているのかを検証することにしました。