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無機起源説によれば、石油は現在も地球内部から供給され続けています。/ Credit : Canva
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石油はなぜ枯渇しないのか? 石油無機起源説の検証

2024.11.09 Saturday

石油は、数億年前の生物の遺骸がもとになり長い年月をかけて地中で生成された、というのが一般的な理解だと思いますが、「石油は生物起源ではない」という学説を聞いたことはないでしょうか。

この石油無機起源説については、1870年代に元素の周期律表で有名なロシアの化学者メンデレーエフが提唱したことが始まりで、旧東欧諸国では古くから定説とされていた学説です。

その後、東西の対立もあり、この学説はあまり顧みられることもなかったのですが、有名な米国の宇宙物理学者であるトーマス・ゴールド(Thomas Gold)が、2003年にScientific American誌に発表したことで、西側諸国でも注目を浴びることになりました。

彼の説く石油無機起源説は、地球が最初から貯蔵しているメタン(CH4)から地球内部の高温・高圧の環境下で放射線の作用(放射線分解触媒として作用)等により石油が生成された、というものです。

無機起源説の学者は、生物が存在しない地層から石油が採れることや、石油にヘリウム、ウラン、水銀等が含まれていることなど、生物起源説では説明できない点を指摘しています。

この学説は、どのような根拠があって、どこまで認知されているのでしょうか。

この記事では、主に実験的検証や地質学的根拠に基づいて近年の石油無機起源説の動向について紹介します。

石油の無機起源説の研究動向については、『石油技術協会誌80巻第4号』に掲載されています。

石油の無機起源説に関する最近の進展 https://www.jstage.jst.go.jp/article/japt/80/4/80_275/_pdf
Deep-seated abiogenic origin of petroleum: From geological assessment to physical theory https://doi.org/10.1029/2008RG000270

無機起源説によれば石油は今も地球内部で作られている

石油の起源については、長らく生物起源説が主流でした。

これは、地球上に生息していた古代の動植物が死んで堆積し、その有機物が地下で熱や圧力を受けて石油や天然ガスに変化したというものです。

一方で、近年注目を集めているのが「石油の無機起源説」です。

無機起源説は、地球のマントル内において、高温・高圧の条件下で石油の起源物質であるメタン(CH4)等が化学変化を起こし、より重い炭化水素(石油の成分)が生成されたとする考え方です。

下図に示すように、その炭化水素は、現在も地球のマントル内で自然に生成され、地殻を通じて上昇し、断層や割れ目を通って多孔質の岩石に吸収されて、油田やガス田が形成されると考えられています。

地球上では、火山地帯や活断層からマントル由来のヘリウムや二酸化炭素が放出されることが観測され、地球内部のガス成分の放出経路となっています。

この理論に基づけば、石油や天然ガスの蓄積は単なる地質現象であり、この地球内部からのガス放出プロセスの一環であるとの解釈です。

無機起源説では、従来の生物起源説とは異なり、石油資源が地球内部から供給されるため、より広範囲かつ深い場所にも存在する可能性があると考えられています。

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マントル層で生成された炭化水素を含む流体が地殻付近まで上昇して石油、天然ガスの貯留層を形成します。/ Credit : Vladimir G. Kutcherov et al., Reviews of Geophysics(2010)

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