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Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部
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火星の大気が失われる「スパッタリング現象」の観測に初成功!

2025.05.29 17:00:35 Thursday

赤く乾燥した惑星として知られる「火星」ですが、かつては湖や川が流れる水の惑星でした。

どうして火星の水はなくなってしまったのか?

その最大の要因は、火星の磁場シールドが弱いために、大気が宇宙空間に失われていき、その過程で地上の水も蒸発してしまったからだと考えられています。

ただ理論としては確かだったものの、実際に火星の大気が失われていく物的証拠は確認されていませんでした。

しかし今回、米コロラド大学ボルダー校(UCB)らの研究で、ついに火星の大気がリアルタイムで宇宙空間に逃げ出していく現象「スパッタリング」を観測することに初成功したのです。

研究の詳細は2025年5月28日付で科学雑誌『Science Advances』に掲載されました。

Scientists Have Clear Evidence of Martian Atmosphere ‘Sputtering’ https://www.sciencealert.com/scientists-have-clear-evidence-of-martian-atmosphere-sputtering
First direct observations of atmospheric sputtering at Mars https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adt1538

スパッタリングとは、どんな現象?

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Credit: canva

「スパッタリング」という言葉は、あまり聞き慣れないかもしれません。

しかしこの現象は、磁場に守られていない惑星では、大気を失わせる大きな原因になり得るものです。

そもそも太陽からは、常に高速で飛び交う粒子の風――太陽風が吹きつけています。

地球はその攻撃を強力な磁場シールドで防いでいますが、火星にはそれがありません。

つまり、火星の大気はほとんどむき出しの状態で太陽風にさらされているのです。

このとき、太陽風の中のイオン(電気を帯びた粒子)が火星の上層大気に突入すると、中性の気体分子に衝突してエネルギーを与えます。

そのエネルギーが十分に大きい場合、分子は火星の重力を振り切って、宇宙空間へ飛び出してしまうのです。

これが「スパッタリング」と呼ばれる現象です。

まるで見えない隕石が大気にぶつかり、粒子を弾き飛ばすようなこのメカニズムは、長い時間をかけて火星の大気を薄くしていきました。

これまでも理論的には存在が予測されていたものの、スパッタリングそのものを実際に観測するのは非常に困難でした。

なぜなら、宇宙に飛び出す微小な粒子の動きは極めて微弱で、他の現象と区別するのが難しいからです。

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