月はどのように作られたのか?
天文学者らは、1969年7月のアポロ11号ミッションの折に、月の誕生に関する最初の手がかりを得ました。
約21.6キロの月の岩石と塵のサンプルが、地球に持ち帰られたのです。
そのサンプルは約45億年前のものであり、月の誕生は太陽系が形成されてから、およそ1億5000万年後だったと推定されました。
加えて、月と地球の岩石組成が似ていること、地球の自転と月の公転の向きが似ていること、月のサンプルに揮発性物質や軽元素がほぼ含まれていないこと(それらが気化してしまうほどの極高温下で、月が形成されたことを示唆する)が判明。
そこから、初期の地球に原始惑星がぶつかったという「ジャイアント・インパクト説」が浮上しました。
この仮説上の原始惑星は、ギリシア神話の女神テイア(月の女神セレネの母)にちなんで、「テイア(Theia)」と名付けられています。
一方で、地球とテイアの衝突がどのように起こり、その後、どんなプロセスを踏んだかは正確にわかっていません。
従来の仮説では、テイアが地球に衝突した際、その衝撃でテイアは無数の破片に砕け、地球の周りを公転しながら数百万年かけて冷却され、月ができたといわれています。
しかし、もし月の大部分がテイアを原料としているのなら、現在の月の組成の多くが地球とよく似ているのか、説明がつきません。
これについて一部の専門家は、テイアとの衝突によって地球の大部分が破壊され、その破片の多くが月の形成に使われたのではないか、と考えます。
ところが、地球が大きく崩壊した場合、現在の月と地球とは、まったく異なる軌道を描くことになるという。
これらの疑問に答えることを目的として、研究チームは今回のシミュレーションを行いました。